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DATUMS 1996.03
ホテル・旅行業界労働組合の国際連帯の必要性

リー・ストリーブ(Lee Strieb)  ホテル・レストラン従業員国際組合(HERE)・シニアリサーチアナリスト

■リー・ストリーブ
 エール大学で歴史学を学び、地域活動家として活動。過去8年間、ホテル・レストラン従業員国際組合で、日本企業を含むカリフォルニア州のホテル、ギャンブル業界に対するキャンペーン戦略の調査開発を手掛ける。


  日米の多くの産業がそうであるように、アメリカのホテル業界も、押し寄せる国際化の波に揺れ動いている。工場と違い、ホテル自体の海外移転こそないが、ここ10年ほどの間にアメリカのホテルの所有や運営は、1987年から90年にかけての日本資本によるものをはじめとして、海外投資家による多くの施設の買収によってグローバル化の道をたどっている。同時に、多くのホテル労働者たちは、使用者側からの作業時間の短縮、業務の外注化、社会保障制度、健康保険抜きのパートタイム労働の拡大などといった、攻撃的なまでの経費節減策のもとにさらされることとなった。
  このような状況に対して、未組織ホテルの労働者の労働組合結成にむけた動きはあるものの、彼らは大きな困難に直面する。ホテル産業のグローバル化により、交渉相手の使用者側が、世界中に多様な投資の網をはりめぐらす反労働組合の色彩の強い強大な多国籍企業であることが多いからだ。
  これら企業のグローバルな権力から事態の改善を勝ち取ることは、自らのグローバル化なくしてはあり得ないことを、労働者と労働組合は知っている。それは、世界各国の労働組合やNGOとの連携と創意に富むキャンペーン戦略によって得られるものである。そこには、言語的な問題をはじめ、政治、文化、戦略などの面で数多くの障害はあるが、個々の動きを繋ぐ国際労働団体の活躍や、冷戦時代に比べて分裂の度合いの低まった政治的環境(さらに、電子メール、ファックスや電話によるコミュニケーションがそこそこの経費で可能なこと)によって、こうした協力関係が今ほど容易になった時代もない。今最も必要なことは組織の枠を超えた共同キャンペーンの展開ではないだろうか。ホテル・ニューオータニ・ロスアンジェルスで現在展開されている、ヒスパニック、アジア系を中心とした数百人の労働者たちによる労組結成に向けた奮闘は、まさにその好機となっている。同ホテルは数カ国に及ぶニューオータニホテル・チェーンの一つであり、筆頭株主である鹿島建設もまた、世界中で公共・民間の建設工事を手がける巨大な建設会社である。
  不公正な待遇、低賃金、高額な医療保険料、そして実質的な雇用保障がないこと、これらに憤る労働者たちは、いまホテル・レストラン従業員国際組合(HERE)の協力のもと、これら二つの巨大な会社に立ち向かっている。
  使用者側による、主だった組合支持者の解雇、スパイ行為、ヒスパニック系組合支持者への人種差別的発言など、激しい反組合キャンペーンにさらされながらも、彼らは、日本や他の国々の労組を含む諸組織からの助力を得ながら、いま世界中にこの争議についての情報を広め、調査や具体的行動に取り組んでいる。こうして築いてきた国際連帯は、ホテル・ニューオータニ・ロスアンジェルスの反組合キャンペーンの阻止にむけて、着実に実を結んでいくこととなろう。

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