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DATUMS 1996.04
シマーを結ぶ沖縄のコラムマガジン『ワンダー』

新城 和博  「Wander」集長」

■しんじょう かずひろ
 1963年沖縄県那覇市生まれ。本業の雑誌や本づくりのほかにも、島唄やブルース、一人芝居のライフキャラバンなどを企画プロデュ―スしている。


  昔から情報誌といわれるものに違和感あった。日本各地にあるタウン情報誌は、東京の『ぴあ』をひとつのモデルにしていると思うのだけど、情報の集め方、見方が結局『ぴあ』的、つまり「東京的」なものになっていて、地域の特性というものが、ダイレクトにはわからないという面がある。『ぴあ』は、あくまでも「東京ローカル」としての切り口で、「情報」を画一化することによって、東京の特性が「純粋」に分かる。しかしあれを、例えば沖縄に持ってきてもしょうがない(売れる、売れないは、とりあえず別)、沖縄は沖縄ならではの「純粋」な情報のあり方があるはずと考えていた僕が、90年「おきなわブーム」のまっただ中に創刊したのが、オキナワワンコラムマガジン『Wander(ワンダー)』である。
  それじゃ、この雑誌における「地域の情報」とはなんだろうか。いろいろ試行錯誤しつつやってきて思うのは、「普通の人たちの、少しこだわったものの見方」というのが、一番面白いということだ。沖縄という<日本国>の中でも、かなり特異な島々にいる我々は、島の文化、生活を語ることが、かなり得意なのである。そうした「ゆんたく」(たわいのないおしゃべり)こそが、一番大切な「地域の情報だと」、とりあえず確信して、それを「コラム」という切り口でまとめた。
  途中から「シマーコラムマガジン」と、より地域を意識した「シマー」という言葉を使って、読者参加を求めてきた。「シマー」とは、「島、故郷、地域」という意味合いのうちなーぐち(沖縄の言葉)。読者として意識したのは、まず同じ空間と暮らしを共有している、同世代を中心としたうちなーんちゅ(沖縄の人)で、よりローカルに目を向けてきたつもりである。
  ところが最近意外な傾向が出てきた。やまとの読者の割合が増えているのである。「おきなわブーム」の中で、沖縄にいろいろな面で興味を持っている人たちが、沖縄での滞在のおりに、地元の本屋でささやかに売られている(謙遜じゃないんです)『Wander』を手に入れ、なぜか気に入り、やまとに帰ってから定期購読するか、どこから情報を仕入れたのか、わざわざ書店に注文したりしてる(なかなか面倒くさいのである、地方の雑誌の流通は)。はっきり言ってやまとの人に分かりやすい内容では決してない。しかしそうした読者の感想はというと「分からない部分もあるけれど、生の沖縄の雰囲気が伝わってよい」というのだ。ねるほど、ね。
  自分たちの生活、文化にこだわることによって、より外にパーソナルで確かなつながりができるということを、ゆっくりながら僕は感じている。この雑誌で出会ったやまとの読者たちが中心となって、93年には「密入国キャラバン」という、沖縄のうたと芝居を中心としたライブキャラバンを、沖縄から出発してやまとで八か所ほど行った。実は、今年も行くのだ。沖縄のシマーとやまとのシマーを結ぶことは、こんな小さな雑誌でもできるのです。

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