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DATUMS 1996.05
新たな領域の開拓へ――経済ネットワーキング学科がめざすもの

古沢 広祐  國學院大學経済学部(経済ネットワーキング学科)教授

■ふるさわ こうゆう
 1950年生まれ。大阪大学理学部、京都大学大学院で学ぶ。農学博士。目白女学院短期大学等の教職を経て、1996年4月から現職。主な著書に『地球文化ビジョン―「環境」が語る脱成長社会』、『共生社会の論理―いのちと暮らしの社会経済学』など多数。


  現代社会の枠組みは、今まさにゆらぎだしている。20世紀の中軸をしめていた「資本主義」対「社会主義」という世界的な対立図式はもろくも崩れさり、社会システムも家族から国会にいたるまで、確固とした機軸を失いかかけている。今世紀、民族対立を超えて人類的普遍主義を手に入れたかにみえた私たちは、再び時計の針を逆に回し始めかのたように局地的に民族対立や内戦状況さえ生みだしはじめた。また、政治的な対立軸から経済的な対立軸へと矛盾がシフトするにつれ、いまや「資本主義」対「資本主義」の対立図式が次第に鮮明になってきたかにみえる。20世紀初頭に掲げられた崇高な理想主義は影をひそめ、即物的な利益動機に基づいた市場原理や競争主義が時代を再びリードしだしたかのようだ。 しかし、混沌化した現代社会の中で、新たに大きく浮上しつつあるテーマがある。それは、社会・経済システムの組み替えともいうべき問題ではなろうか。これからの社会の在り方について、今後は全く別の枠組みから見直す必要がある。すなわち二項対立ではなく、3つの社会経済システムの混合的(相互浸透的)な発展形態である。なかでもとくに、市場メカニズム(自由・競争)を基にした「私」的セクターや、計画メカニズム(集積・管理)を基にした「公」的セクタ―に対して、第三の軸としての協同的メカニズム(分権・参加)を基にした「共」的セクターの展開を重視する必要がある。
  さらに、それぞれのセクタ―を独立した存在としてだけとらえるのではなく、相互に影響しあい、時には浸透しあったり対立しあうダイナミックな関係として形成されていることに注意したい。そうしたダイナミズムを的確にとらえる言葉の一つに「ネットワーキング」というキーワードがある。それは、既存の枠組み(ヒエラルキー、単線・直列型の組織形態)を越えようとする内的な変革の動き(複合・並列型の組織形態)を示す意味の言葉でもある。
  こうした時代背景をうけて、既存のパラダイム(枠組み)超える視点を取り込んだカリキュラム編成をめざそうとしたのが、1996年4月に新しく開設された「経済ネットワーキング学科」である。本学の経済学部は3つの学科(経済ネットワーキング学科、産業消費情報学科、経済学科)によって再構成、編成しなおされたのである。とくに中間領域をカバーする要と位置づけられるのが経済ネットワーキング学科であり、本学科は大きく3つのコース、「地球環境と開発経済」「地域と経済」「企業ネットワーキング」からなりたっている。
  3コースとも、学科基幹科目としては「ネットワーキング原理」をはじめとして「ネットワーク組織論」「ボランティアと組織」「異文化コミュニケーション」「専攻地域事情」等が用意され、さらに専門応用科目としては「地域のネットワーキング」「NGOの役割と課題(国際交流特論)」「企業行動と社会貢献」「国際経営とネットワーキング」等といったような科目が設置されている。注目してほしいのは、基幹部分に既存の学問分野をこえた学際領域の科目が配置されている点であり、それが最大の特徴といってよいだろう。
  卒業後の進路としては、国際機関で働く国際協力・交流要員や各種市民公益団体・NGO・NPO要員、あるいは地方自治体や地方振興機関等の要員、民間アドバイザー、コンサルティング、情報ビジネスや国際的ベンチャービジネスを興す要員などを念頭においている。いわゆるネットワーカー的な人材を養成したいと考えているわけである。
  おりしも、我が国でもやっと国会のレベルでNPO支援法案が議論される状況を迎えつつある。時代を先取りする試みを、そもそもNPOの一つであったはずの民間の教育研究期間(私立大学)こそが率先してパイオニア的役割をはたすべきではないか、というのが私たちが今いだいている抱負である。

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