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DATUMS 1996.07
日本のイメージと観光

川竹 和夫  駒沢女子大学人文学部国際文化学科教授

■かわたけ かずお
 1924年京都市生まれ。東京大学文学部卒業。50年NHKに入局。報道局副部長、放送番組総括センター主管、放送文化基金事務局長、放送世論調査所長を歴任。東京女子大学教授を経て、現在駒沢女子大学教授。ITFP-JAPAN(国際テレビ番組フロー研究日本プロジェクト)代表。主な著書、『データブック「日本人」』『テレビの中の外国文化』『ニッポンのイメージ』『異文化の中のニッポン』『メディアの伝える外国イメージ』ほか多数。


  日本から外国へのテレビ番組輸出は近年増加の一途を辿っているが、その大部分は「アニメ(約60%)」で、日本イメージにつながらない。アジア地域では、香港・シンガポールを拠点に広域の衛星テレビ放送がいくつも誕生し、欧米のメディアがそこに進出してきているが、日本はこの市場にも加わっていない。
  メディアを通じて対外イメージの売り込みに民間で尽力している例を紹介しよう。北欧のフィンランド。ここに「国際知識普及協会」という、青少年を対象に、国際感覚の向上に努めている団体がある。この協会では、フィンランドを外国に知らせるために、高校生の交流をすすめるとともに、“Finland in Fact (フィンランドの実情)”というビデオ番組を作って、外国(主としてアメリカ)の学校に送る仕事を始めた。「イメージの売り込み」にはなんといっても映像が効果的だと考えたからである(近くこのビデオの日本語版ができる)。
  最近、日本のイメージは、阪神大震災、オウム真理教事件などでマイナス方向に印象づけられている。イメージ改善のために、テレビ業界・観光業界がタイアップして、“Japan in Fact ”ビデオを作って各国に送ってはどうだろうか。観光立国の基本は宣伝にある。
  外国でのニッポン・イメージは、マスメディアによって形づくられる。中でも、テレビの影響は大きく、どの国でも「あなたは日本に関する情報を、どのメディアから入手しますか?」という調査をすると、70%以上が「テレビ」と答える(2位は「新聞」)。では、各国のテレビが日本を“正しく”あるいは“好意的に”伝えているかというと、多くの国で“NO”である。
  外国のテレビが、日本を伝える場合に、共通のステレオタイプがある。欧米の場合は、「経済大国ニッポン」と「フジヤマ・ゲイシャのようなエキゾティック・ジャパン」の両極端に分れるのが通例である。アジアでは、それに「戦争中の侵略国イメージ」が加わる。アメリカでは、日米経済摩擦の深刻化とともに、メディアの中で、ネガティブな日本が強調されるケースがめだってきた(映画“ライジングサン”小説“日米開戦”など)。ヨーロッパでは、日本に関するメディア情報が少なく、取り上げる時は、ネガティブな側面が強調される(英・仏のテレビのテーマ“軍国主義の復活”“日本式企業経営の批判”“日本の自然破壊”など)。
  こうした「日本イメージ」は、国によって微妙に違うので、イメージ改善のための対策は、それぞれ国情に応じて考えなければならないが、日本では、それがあまり適切に講じられているとは思えない。政府はあまり対外広報に力を入れていないし、“外国に日本イメージを売り込むのに重要な役割を果たすべきテレビ”も、業界の認識が不足しているように思える。

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