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DATUMS 1996.08
夏の海! ライフセービングの最前線

岩崎 竜治  ポート(株)代表、葉山ライフセービングクラブ会長

■いわさき たつじ
 1962年東京都生まれ。88年日本大学農獣医学部卒業。日本動植物専門学校常勤講師、(社)サーフ90交流協会ライフセービング事業コーディネーターを経て、現在ポート(株)代表取締役。(学)横浜YMCAスポーツ・海洋科学専門学校非常勤講師。葉山ライフセービングクラブ会長、相模湾ライフセービングネットワーク代表、日本ジュニアライフセービング協会事務局長を務める。


  海辺でのライフセービング活動というものをご存知でしょうか。海洋型レジャーが盛んで、時として波が高く、流れの速いような厳しい自然環境の中で、又それを遊びの場としてきたアメリカ西海岸やハワイ、豪州などで発展し、長い歴史を持つ海浜での事故防止、人命救助活動のことです。これらの地域では行政が主体として行うプロフェッショナルなサービスと、それを支援し、その活動に厚みを持たせているボランティアの多くの人々の活躍があるのが特徴です。
  豪州ではプロをライフガードと呼び、彼等の活動はウィークデイ。ボランティアをライフセーバーと区別し、ウィークエンドのボランティア活動としています。個々の技能はプロが勝るものの、海浜が賑わう土、日はボランティアメンバーの数とそのチームワーク、整備されたシステムがその差を補って余りあるものにしています。活動の内容は事故防止の為のパトロール、トラブル発生時の救助活動(レスキュー)と海浜利用者に対する安全知識や思想の啓蒙が柱となっています。
わが国でも十数年前より、これらの活動を模範としてボランティア組織をつくり、湘南地域を中心に活動を展開しています。
  日本の海浜には残念なことに沖合での海上保安庁のサービス、事故発生後の警察、消防の活動以外には、海浜やその周辺水域での事故を未然に防ぐための行政サービスは皆無と言える状況で、わずかに神奈川県など数県に海水浴場の安全管理について条例があるのみですし、これらについても、その内容は不充分と言わざるを得ない状況なのです。多くの社会制度が整備されているはずの私達の社会にあって、これ程、重いはずの人命の安全が軽じられている場所があったのかといった実感です。
  このような状況を補おうとする私達、日本のライフセービング活動も近年、徐々に盛んになり、各大学や各種学校での学生活動としてのクラブ、サークルの動きや、彼等を中心とするライフセービング競技会の運営、メディアでの紹介、各地域でのボランティア・ライフセービングクラブの運営の展開などがありますが、いずれも独立独歩、なんらバックアップを得られない弱い体質のままのボランティア活動にすぎません。
  私達には、その場で起きるトラブルに対処する事はできても、海辺で人命を守るための社会制度を整備するための力には限界を感じざるを得ず、今後、私達のボランティア活動を支援できるような社会制度の確立や、行政レベルの前向きな取り組みに大いに期待しています。

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