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DATUMS 1996.09
温泉タイプ入浴剤で浴室革命

谷野 伸吾  (株)ツムラ商品開発研究所部長

■やの しんご
 1953年東京生まれ。京都工芸繊維大学大学院卒業後、?ツムラ入社以来研究開発畑を行く。現在、商品開発研究所開発研究一部部長。プライベートでも温泉と登山を愛す。雲海を眼下に見下ろす「白馬鑓温泉」をはじめ各地の温泉を探索。


  私と入浴剤との初めての出会いは小学生の頃だったと思います。オレンジの粉末がお風呂に入れると何故か不思議に黄緑色に変わる。これは弊社の昭和5年に誕生した「バスクリン」が爆発的に一般家庭に浸透し始めた昭和30年代後半と重なることになります。
  入社以来17年間入浴剤の研究開発に従事していますが、温泉タイプ入浴剤は約12年前、家庭で手軽に温泉を楽しむことができ、体によいものができないかとの発想から、研究開発が開始されました。まずは温泉とは何か?東京にある中央温泉研究所や、北海道、群馬、九州などにある温泉医療を行っている大学病院を訪ねることからのスタートでした。
  科学的に温泉の効用の裏付けに確信を持って、次に実際に入浴剤を作るためにいろいろ考えたわけです。単純に温泉水を乾燥して粉末化する事や、温泉地で売られている湯ノ花を用いたらどうかなど、そのために日本の有名な温泉地の湯ノ花や温泉水を集めてみたりもしました。最終的には温泉水に含まれている「成分」とその「比率」をできるだけ忠実に再現することにより『温泉の薬効』を求め、「色や香り」「パッケージ」で『温泉地の情緒』を出そうと考えました。目標が定ったら、早速「温泉調査班」を作り実地調査に出かけたのです。
  温泉イコール物見遊山のイメージが多分にあるため、社内的にはあまり大きな顔では出かけられないのが悩みの種でした。「企画部門」「香りを作る部門」「製剤を作る部門」及び「有用性評価部門」の各担当者でチームを組み各温泉地を回るわけですが、初めは意気揚々張り切って出かけるのですが、二日もするともうダウン。と申しますのは、当然、入浴感触も調査項目にあるため、早朝より片っ端から温泉にはしごで入浴します。1日に10回から15回も入浴するため、さすがに湯疲れしてグッタリしてしまいます。それでも宿に着いて、食事後、何か(?)を期待して興味津々露天風呂に出かけて行ったりもしました。
  持ち帰った温泉水は成分分析を行うのですが、浴槽風呂釜に良くない成分が含まれていることが多分にあり、全く製品化できず、がっかりしたこともありました。さらに入浴剤の溶解色や入浴感触についても種々検討しました。お風呂を白濁させることには、2年近くの歳月をかけやっと完成の暁を見ました。苦労のかいあって大ヒット。それまでの入浴剤の溶解色は透明色という常識を覆し、今では他社も追従し白濁の入浴剤が大きなジャンルへと成長しています。
  また温泉独特のヌルツキ感の再現を近年検討し、今年の新製品に応用しました。消費者の反応を楽しみにしています。さらに入浴したときの血行促進効果、温熱効果、皮膚をみずみずしくする効果などを当研究室や大学病院で評価しており、高い有効性が認められています。このようにしてできたのが「ツムラの日本の名湯シリーズ」です。今では多くの消費者の方々に信頼され愛用されています。
  日本人のお風呂好きはその気候にあるといわれています。じめじめした不快指数の高い夏の暑さ、冬の寒さなどのストレスを入浴することにより解消しているわけです。入浴剤イコール温めると思われがちですが重曹を用いたものは浴後さっぱりして夏の入浴にとても適しています。また今年の弊社の新製品「アイシングバス」はメントールを用いた超クール感のある入浴剤です。開発当初、テスターとして冬場に入浴したところ寒くてガタガタ。あまりの効果に浴槽から出るに出られずといった笑えぬエピソードもあります。
  入浴をより一層楽しくそして有効にするために、このような入浴剤をそれぞれのTPOに合わせてご活用されることをお薦めいたします。

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