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DATUMS 1997.10
環境保全のシートベルト

向井 哲朗  王子製紙株式会社米子工場

■むかい てつろう
 1960年鳥取県立米子東高等学校卒業後、王子製紙株式会社米子工場入社。64年日本大学科学技術研修所卒業。89年から環境新聞「中海」発行責任者。鳥取県環境アドバイザー、(財)日本グランドワーク協会専門委員等、多数務める。88年鳥取県知事賞「中海の水質汚濁防止対策について」をはじめ、ふるさとづくり振興奨励賞、水環境賞(環境庁)他多数受賞。


  経済の高度・安定成長によって、私たちは今日、物質文明の満ち足りた豊かな社会に生き、その恩恵に浴している。しかしながら、物を粗末に扱い、使い捨てをしてきたツケとしてあふれるゴミを処理できず、生活にかけがえのなかった小川や湖、里山を見るも無残な景観にしてしまった。
  究極目標であるゼロエミッション社会の具現化がほど遠い今日にあって、リサイクルを厳守し、出さない工夫と努力をすることが重要なコンセプトとなる。このような現況の中、私が問題提起したちょっとした心くばり、気くばりでできる「環境に優しい暮し方――リサイクル生活」を住民と企業(私が勤務する工場)が一体となって、悪しき消費習慣を改革しつつある。
  捨てればゴミ、活かせば資源。92年夏、使用済み割り箸を製紙原料にすることでゴミ減らしを提案。会社のトップの理解があって社員食堂から始めた。地元、皆生温泉の女将さんの協力を得、地域に広げた。誰もが手身近かにできるゴミ減らしと、資源を大切にする両面を具備していたことで、学校、ボランティア団体、飲食店、行政、企業などさまざまな人が加わり輪が広がった。使用済み割り箸3膳がA?4版コピー用紙1枚に生まれ変わって日本中旅が出来る。
  新聞やテレビで大きく取り上げられたこともあって、鳥取県米子発の「旅物語」の主人公「割り箸」は点から線へ、線から面へと再生のドラマを演じている。当初、月 300キロほど送られてきた箸が今では40倍の12トンに増えた。集めた割り箸の半分が紙になるので、月6トンが紙に生まれ変わって旅をしている。紙にならない残りの木質は発電用ボイラーの燃料に利用する完璧なリサイクルになっている。
  また川や湖を汚す台所排水を、使い古しのパンストを利用しての浄化方法を提案。破れてはけなくなったパンストの両脚部分を15--20cmに輪切りにし、一方の端を強く縛る。縛った部分を下にして流し台のゴミ篭にかぶせる。腰の部分は股下5cmに切って縛り、同様に三角コーナーにかぶせ台所の調理くずの流出防止や水の浄化を図る。自治会や婦人会に出向き、台所排水を使って浄化実験をし、自分の目でその効果のほどを確認してもらい実践に結びつけている。
  台所の食べかす、調理くず等の生ゴミは肥料に還元し、ゴミの減量化を図っている。飲み残しアルコール、牛乳、ビール、お米のとぎ汁、ジュース等を飲んだ洗い水はバケツに一端回収、庭木にまき肥料として還元。
  廃天ぷら油は、下水に捨てれば汚濁の元凶だが重油の代替になることに着目。町内の公民館やホテル、旅館にポリタンクを常備、ここで回収して私の工場に運び発電用ボイラーの燃料にしている。硫黄が含まれていないので、排ガスがクリーンで一石三鳥にもなる。
  「かつてのように泳げる中海を取り戻したい」の一念で、地域住民や次代を担うチビッ子たちがこれらの問題を「環境保全のシートベルト」という位置付けで確実に実践できるようになった。そして、これらの取り組みを企業がバックアップしてくれ、行政も応援してくれるようになった。住民・企業・行政の三者が手を携えて自分たちの地域を自ら汗を流してより良くする地域再生のグラウンドワーク運動を、私たちの手で確実なものとしたい。よくするのも、悪くするのも私たちの腕次第だから。

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