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DATUMS 1997.11
バリアフリーからユニバーサルデザインへ

乙武 洋匡  「バリアフリーからユニバーサルデザインへ1997」実行委員長

■おとたけ ひろただ
 1976年、東京生まれ。早稲田大学政経学部2年。先天性四肢切断のため、外出時には電動車イスを使用。小・中学校や大学を中心に「心のバリアフリー」をテーマに月に数本の講演をするかたわら、地元商店会を母体とする「早稲田いのちのまちづくり実行委員会」バリアフリー担当として活動。


  近年、広がりつつある言葉に『バリアフリー(barrierfree)』がある。文字どおり、障害者・高齢者に対する障害物(barrier)を取り除く(free)という動きを指す。本来は段差の解消、スロープの設置など、物理的側面からバリアの解消を目指していたが、最近ではもう1つのバリアフリーが注目され始めた。「心のバリアフリー」である。
  私自身、障害者として21年間生活してきたが、世間で言われているほど差別や偏見に苦しんだという経験はない。では、なぜ「心のバリア」が生じるのか。それは「慣れ」の問題ではないだろうか。我々が普段生活している中で、障害を持った人間と接する機会はあまりないのが現状である。環境を整えない社会が悪いのか、家に閉じこもりがちな障害者が悪いのかという難しい議論は別にして、現実として社会で障害者を目にする機会が少ないのである。日常で接したことのない相手に対して適切な対応を取れと言っても、これは難しいものだ。誰でも最初は戸惑ってしまうというのが、正直なところだろう。
  この問題を解決していくためには、やはり学校に、職場に、そして社会に障害者がいて当たり前という環境をつくり出すことである。むろん、そのために健常者・障害者双方の努力が不可欠であることは言うまでもない。
  このバリアフリーをさらに一歩進めた「ユニバーサルデザイン」という概念をご存知だろうか。これは、バリアが存在するからバリアフリーにしなければならないのだという考えに基づき、障害の有無を問わず、すべての人々が利用できる空間をつくり出すことを目指す。障害を持った人に特殊設備をもって対応するのではなく、誰もが利用しやすい普遍的なデザインを心がける。これにより、障害者・高齢者も仲間から隔離されたり、疎外感を感じるということがなくなるのである。
  そこで、本年12月「バリアフリーからユニバーサルデザインへ1997」と題し、障害者・高齢者を含めたすべての人が「自由に」旅を楽しむには、どのようにしたらよいのかを考えるシンポジウムを開催することになった。1994年に開かれた本シンポジウムでは、障害者・高齢者の旅の現状と課題について、日本ではじめて貴重な発表や意見交換の場が提供された。それから3年、この間の社会環境の変化や関心の高まりなどを踏まえて、21世紀へ向けた「もっと優しい旅」を考えていこうというのが今回のねらいである。
  「夢と感動と希望」を与えてくれる旅。その旅を、障害の有無にかかわらず誰もが楽しみたいはずである。「優しい旅」の実現を通して、健常者・障害者の区別のない「優しい世界」の実現を目指していきたい。

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