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DATUMS 1997.11
市民によるネットワークプロバイダJCA−NET

橘 雅彦  市民コンピュータコミュニケーション研究会代表

■たちばな まさひこ
 1957年生まれ。東北大学大学院修了。現在埼玉大学理学部教員(無機化学)。大学在学中から市民運動にかかわる。92年インターネットを利用した国際的な市民運動のネットワークAPCの存在を知る。93年日本における市民の情報ネットワークの拠点づくりを目指す「市民コンピュータコミュニケーション研究会」の創設に参加。95年から同運営委員。Email: mtachiba@jca.ax.apc.org


  去る9月6日東京で、市民運動、NGO活動、ボランティア活動に、コンピュータ通信を活用してきた人たちが集まり、「JCA--NET(市民組織)」の設立総会が開かれた。
  私たち市民コンピュータコミュニケーションも呼びかけ団体の一つとなって始めた、「市民のための情報交換とコミュニケーションの拠点づくり」という目標が、やっと形になって歩き始めたのだ。
  環境、人権、福祉、労働問題、男女平等、テーマこそ異なれ、市民による自主的、自発的な活動に共通する方法論は、問題の所在をまず多くの人に知ってもらうこと、そして問題を解決するためのノウハウを集め、最もよいと思われる方法を選択し、それを実行することである。まさに「市民による情報戦略」が、運動の成否を決めるのだ。
  たとえば問題の所在を知らせるには、市民自ら情報の発信をする必要がある。しかし、既存のメディアは、新聞にしろテレビにしろ、市民の言い分をそのまま載せるものとはいえない。自分で発信できるチラシやニュースレターでは行き先が限られてしまう。
  それが、コンピュータ通信(パソコン通信とインターネットを総称してこう呼んでいる)を使えば、「会議室」や「ホームページ」などを通じて、不特定多数の人に訴えることができる。同時に、とくにこの問題に関心の深い人たちに「電子メール」を使って協力を訴え、相談することもできる。ある問題について同一メンバーとメールを共有しあう「メーリングリスト」も重宝するツールだ。
  こうした情報交換が進んでいくことにより、問題解決のために誰がどんな行動をし、どんな結果を得たか、というような情報を蓄積していくこともできるようになる。それは、他の人にとってかけがえのないノウハウともなりうるものだ。
  このような双方向性と自由度の大きさを持っていることにより、コンピュータ通信は、市民の自主的な活動にとって非常に強力な道具になるのである。
  JCA--NETは、こうした市民のニーズに応えるため、メール、会議室、ホームページなどの機能を、年2000円の会費と月2000円の使用料で全国どこからでも使えるように提供している。また、まだコンピュータ通信を自由に使える人が多くないことから、コンピュータ教室の開催、ユーザへの電子メールや電話によるサポートを重点的に行っているが、このサービスが非常に好評を得ている。
  まだ正式運用に入って半年であるが、すでに多くの市民団体がJCA--NETにホームページを置いて広報に活用し、またメーリングリストを設置して全国のメンバー相互の連絡に利用している。
  とはいえ、ユーザ数はまだ300と少なく、そのため専従は事務局長一人だけ、あとはアルバイトとボランティアでまかなう体制をとらざるを得ない。なるべく多くの市民にJCA--NETへの参加を呼びかけてユーザ数を増やし、非営利で安定的な経営を目指すことが目下の課題となっている。

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