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DATUMS 1997.02
虐待防止NPOは子どもの味方

矢満田 篤二  矢満田社会福祉士相談室主宰

■やまんた とくじ
 1934年元満州生まれ。愛知県職員として勤務しつつ名城大学(夜間部)卒業。定年退職するまでの14年間は児童相談所の児童福祉司として勤務し、特に養護児童の里親委託や養子縁組に取り組み、家庭内養育を積極的に推進。在職中に社会福祉士資格を取得し登録。「子どもの虐待防止ネットワーク・あいち」運営委員。96年12月第 8 回名古屋弁護士会人権賞受賞


  母親の連れ子が義父に繰り返し折檻され、内蔵出血で死亡した事例。母親が夫の暴力に耐えかねて家出した後、残された中学生の長女に父親が強姦を重ね、それを知った父方祖父も強姦に加わり、長女が妊娠中絶した事例。数日に一回帰宅する母親から生活費を受け取り、子どもだけで暮らしていた異父兄弟の妹が栄養不足と兄たちの暴行で衰弱死した事例。義父と実母が共謀してわが子を殺害し、生命保険金詐取に失敗して逮捕された事例。保護者であるはずの親族から虐待される子どもたちが後を絶たない。 先年、再婚した妻が夫の2歳の連れ子の躾に焦り、全身打撲で死亡させた事件があった。民放のTVショウは「鬼のような継母」というタイトルを付けて放映した。しかし、その母親自身には、子どもの頃、自分の親から「顔も見たくない要らない子だ」と嫌われ、学校では教師と級友から差別やいじめを受けていた不遇な生育歴があった。これまで自殺未遂が数回あり、現在も精神科医の治療が必要なことは、執行猶予の判決があった裁判の傍聴人しか知らない。
  本来は児童虐待に関しては、児童福祉法に基づき児童相談所が対応すべきであるが、このケースでは母子関係を危惧する通報を受けながら適切な対応ができなかった。
 わが国の児童相談所の相当数は、所長や児童福祉司が一般事務職員で構成されており、専門性や経験年数が乏しい。専従の弁護士職員もいないので保護者と対立する虐待事例では、消極的な取り組みとなるのも当然であろう。
  「子どもの虐待防止ネットワーク・あいち」(略称:CAPNA)の主要メンバーは、弁護士、医師、ソーシャルワーカー、報道記者、教員、電話相談員等で構成されている。まだ法人格はなく、活動費用は、会費と善意の寄付金のみで運営しているため有給スタッフは置けず、すべて会員の無給奉仕に頼っている。しかし、多様なスタッフの専門性の高さは児童相談所の比ではなく、NPO(非営利活動組織)の典型例である。
  CAPNAが発足後1年間に電話相談を含めて対応した虐待件数は、約 300件。その中には通報を受けて数時間以内に弁護士が対処し、子どもの保護に成功した事例が含まれる。CAPNAの活動で表面化した虐待数は、公共機関の限界性を示す潜在数ともいえよう。
  官僚依存体質を改善する真の市民主体社会の形成には、市民の自己判断力に基づく、多様なNPOへの積極的な参加姿勢が不可欠である。子どもの最善の利益に最大の考慮を求める子どもの権利条約をNPO活動が支えている。

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