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DATUMS 1997.03
スペースがつくる大人の空間

土井 和代  スペースじょあん代表・エッセイスト

■どい かずよ
 1941年愛知県生まれ。お茶の水女子大国文科卒。79年まで(財)東京大学出版会勤務。81年共同経営で居酒屋じょあん開店、82年から代表に。筆名漆田和代として女性学研究を続け『女が読む日本近代文学――フェミニズム批評の試み』(共編著)ほかの著書があり、94年から日本大学文理学部で女性論を担当。


  東京渋谷の繁華街、道玄坂に飲食店を開いて16年になる。そのころ女性が一人で気楽に入れてお酒も楽しめる店は、いまよりずっと少なかった。そんな店がほしいと仲間で始めたのが発端である。昨年10月下旬、初めてリニューアルし、名前も“スペースじょあん”と改めた。
  入りやすい店がふえたといっても、声をかけられ、楽しくもない話題につきあわされることが女性には少なくない。一人で飲んでるほうがまし、と思っても口には出しにくく、さりげなく会話をうち切る潮時をはかりつつ飲む……。相手の気詰まりに気づくセンスさえない(あれば、こんな行き違いは生じない。皮肉である)男性が多すぎるのだ! 照れ、慎ましさ、恥じらいは、いまや男性にこそ身につけて貰いたい美徳である(男の色気をそこに見る、と極論する友人もいるくらいだ)。ところで、この店だと気まずい会話をつづけなくてすんで安心、と女性たちが言う。男性の対応がよいのか、それとも……。
  開店して数年後から、トークショーやミニコンサートなど、ささやかな情報発信的イヴェントを始めて、トークは先日30回目を迎えた。「女にとって産む、産まないとは……」吉広紀代子さん、「平安朝に見る“母性”」服籐早苗さん、「ウーマンリブって何?」三木草子さんほか、のようにフェミニズム関連のテーマが多いが、参加者に男性も少なくない。ふだんは男性客のほうがやや多いのであるから、トークのテーマや人選は女性本位で良いと考えているが、フェイス・トウ・フェイスの話が出来る場として今後も大切にしていきたい。ミニコンサートはこのところ、沖縄民謡の会が回を重ねている。
  イヴェントのほかにも種々NPO的な役目(書籍の販売や、さまざまな女性に関する情報の提供など)も果たしてきたが、ごたぶんにもれず経営は苦しい(私の給料は未払い続き)。そこでJRや地下鉄の駅から数分という地の利を生かして、今回パスポート会員という制度を設けることにした。年会費を払っていただいた方々に、飲食店として営業していない時間帯に、ここをスペースとして利用する便宜をおはかりしようというもの。そのため、照明や、通信機器、パソコンなどを新しく整えた。存続を願う方々からの寄付におすがりしたのでは、飲食店の看板を掲げてきた店として恥ずかしい。何らかの見返りにもなるようにと考え出したこの方式が、定期的な研究会などとして少しずつ定着しつつある。じょあんのホームページも近く開きたいと考えている。

●スペースじょあん:TEL・FAX 03-3464-7163
 渋谷区道玄坂2丁目16番地19号 都路ビル3階

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