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DATUMS 1997.04
NGOが途上国に新エネルギーを導入

デボラ・A・マクグラフリン  インサイツ・イン・アクション社長

■DEBORAH A. McGLAUFLIN
 1975年コネチカット大学卒業、文学士(アジア研究)取得。78年ハワイ大学大学院を卒業、文学修士(東アジア研究)を取得し、日本女子大学の研究生として来日。米国YMCAで海外のプログラム・ディレクターを務め、以後19年にわたり社会、経済、アジア問題にかかわる米国のNGOの運営、募金、開発事業に携わる。プロジェクト、組織の立ち上げや拡張、新たな資金源及び募金方法の導入など、その戦略と手腕は高く評価された。現在、コンサルティング業界で女性の社長として草分け的存在であり、顧客がすべてNGOということでも注目されている。


  インサイツ・イン・アクションは、アメリカで世界のNGOを対象にコンサルを業務としている。当社のクライアントの一つであるSELFの非常にユニークな活動について紹介したいと思う。
  SELF(太陽光発電照明基金)は米国のNGO(非政府組織)で、発展途上国の配電網から離れた家庭に太陽光発電システムによる電力供給を促進している。地球上ではまだ20億の人々が電力の恩恵を得られず、依然として19世紀と同じ燈油に依存しており、二酸化炭素の排出が地球環境を脅かしている。
  世界の村落で送電網を利用できない住宅用太陽光発電システムの市場規模は、2010年には少なくとも20万kwになるだろう。これはガスと石油は低価格を維持し、政府の資金援助に占める再生可能エネルギーの優先順位は今後も低いと想定し、伸び率を12--15%と想定している。ガスと石油の価格が実質3%上昇し、政府の助成が急増すると、2010年には60万kwに達する可能性もある。
  こうした新市場に向けてSELFは主に米国の民間財団から資金援助を得てパイロット・プロジェクトを始め、対象国のNGOと協力して有償の販売活動を行い、資金を回収し、それを回転させながらプロジェクトを拡大している。また地域住民による所有・管理形態の確立を手助けし「草の根」の開発プロジェクトを成功させてきている。
  政府や従来の融資機関は、この新しいパラダイムのもとで機能できるように変わってゆくのは難しいが、これは進取の事業を手掛ける民間部門やNGOに新たな機会を提供する。NGOは民間企業では引き受けられないようなリスクを負い、新たな資金調達戦略を策定して、費用を全額前払いできない家庭でもシステムが利用できるようにしている。また、営利事業のパートナーとなり、新市場の開拓に貢献もしている。
  SELFが資金援助して実施しているプロジェクトは中国、インド、ネパール、スリランカ、ベトナム、南ア共和国、ウガンダで、全額または一部資金を提供して実験中がブラジル、ソロモン諸島、タンザニア。提案中がバングラデシュで、これらはいずれも現地に地方自治体、NGOの銀行等のパートナーを持ち、村の貸付、地方開発銀行融資、信用貸し等種々の融資方法を採っている。
  モジュールの供給者はBPソーラー、シーメンス等世界的PVメーカーから途上国の地元のメーカーまで種々ある。システム規模は22--50Wの範囲である。途上国の村落で需要が多いのは35--50Wのシステムで日没後のミニ蛍光灯数本と小型白黒テレビ、ラジオかカセットレコーダーを4時間程度使う電力をバッテリーに蓄えられる最低規模である。購入者の約3分の1は現金で、約3分の1は頭金と残金1年払い、残りの約3分の1は3--5年の融資が必要である。中国では遊牧民が現金で購入し、移動しながら電力の恩恵を受けている。
  SELFは技術者の訓練、消費者の教育、システム購入のための融資など広範囲に取り組んでいる。また消費者に密着した地元の既存組織との共同を重視し、機具の組み立て・販売を行うために現地企業の新設も行っている。
  このようにNGOといえども、企業なみの戦略で途上国に新エネルギーを導入することが可能であることをSELFは実証している。

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