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DATUMS 1997.04
風におまかせ・お日様におまかせ

前田 一寿  新エネルギー・産業技術総合開発機構

■まえだ かずとし
 1960年鹿児島市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。84年株式会社熊谷組入社。西サモア・米国の海外駐在や財務・新規事業部門を経て96年4月より新エネルギー・産業技術総合開発機構に出向。現在、新エネルギー導入促進部所属。


  突然ですが私はみかんが大好きです。中でも屋久島産の椪柑(ぽんかん)が一番。ちょっと厚めの皮、甘い果汁にさわやかな香り。これぞ自然の恵みが凝縮されている感じです。
  屋久島というと標高 2 千mの洋上アルプス、屋久杉、原生林、豊富な水が思い浮かびます。世界自然遺産に指定されたこの環境を21世紀に向けどのような形で守り、そして人間が共生していくか。非常に難しいテーマに地元の人々は取り組みはじめています。住民1 万4千人と年間観光客数35万人。この現実を踏まえ「屋久島小さな地球村」構想が進んでいます。CO2 ・NOX ・SOX といった地球温暖化や酸性雨の原因となる化石燃料の追放、廃棄物の再資源化・有効利用(ゼロエミッション)が柱です。
  具体的には石油火力発電に代わり島内5400世帯の屋根に太陽光発電、年平均6mの強風を利用する風力発電、降雨量年間4千mmを超す水資源を使う小水力発電等(日本ではまだなじみが薄い技術ですが)の導入。そして島内の3800台のガソリン自動車を電気自動車へ転換。生ゴミのコンポスト化(肥料化)。一般ごみのRDF化(固形燃料化)。いろいろと規制があるので実現は容易ではありませんが、現在利用可能な新エネルギー技術が凝縮されているのがこの構想です。
  今、私が所属している新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、度重なる石油危機を教訓に石油を代替するエネルギー(原子力を除く)の開発・普及を目的に80年に設立された特殊法人です。その後、時代は変わり低価格かつ安定的な石油供給が続き当面の課題はクリアされてしまいました。経済性が低く(通常の発電コストの数倍)安定性にも欠ける(風まかせ、お日様まかせの)新エネルギーは影が薄くなりました。
  そんな中、前述のような環境への関心が高まり新エネルギーも久しぶりに脚光を浴びています。先進各国では地球レベルでの環境問題に取り組むため2000年までに各国の CO2排出量を90年以前の水準に削減する旨合意しました。これを受け欧米諸国では急速に新エネルギーが普及しつつあります。ドイツには2600基、デンマークにも3700基に上る大型風車(高さ数十m)が建ち(日本:60基程度)ヨーロッパの新しい風景となっています。我が国でも更なる省エネと新エネルギー大規模導入を図っています。でも産業部門の努力にかかわらず家庭・運輸分野のエネルギー需要が伸び、CO2 排出量も増加。新エネの普及は国内エネルギー供給量のうちわずか1.1%(94年)。寂しい限りです。
  通産省は97年度から「新エネ法」をスタートします。新エネ導入事業者や自治体への債務保証、補助金交付、無利子融資等のメニューが準備されています。住宅用太陽光発電モニター事業(設置コストの一部補助)も96年度の1600軒分から97年度は9400軒と大幅に拡充されます。日本にはいい風はないと言われた風力発電も、実際にはあちこちに適地が見つかりウインドファーム設置へ向け研究が進んでいます。それでもエネルギー供給(原油換算)に占める新エネの比率は2000年で2.0%、2010年でも3.0%程度の予測です。我々の努力だけではこんな程度。皆さんの省エネ等のご協力も必要です。
  数十年後には確実に枯渇する石油。NEDOではクリーンで無尽蔵に供給でき次世代の大本命といわれる水素エネルギーの研究・開発も進めています。CO2 の固定化技術も研究しています。両方とも実用化にはまだまだ時間がかかりそうですが。
  日本のエネルギー供給を考えながら、思わず椪柑に伸びてしまう右手。肥満怖さに自分自身のエネルギー消費は忘れないよう左手にダンベルを持つ毎日です。

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