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DATUMS 1997.06
三大休暇シーズンからの脱出

中村 雅信  観光労連中央執行副委員長

■なかむら まさのぶ
 観光・航空貨物産業労働組合連合会中央執行副委員長。昨年度より当連合会旅行業政策委員会を担当。


  過度な企業中心社会への反省と人々のライフスタイル変化に応じるかたちで、「労働時間短縮」や「仕事と家庭・地域生活の調和」の重要性が叫ばれるようにな って久しい。90年代初頭には、労働者のリフレッシュを目的とした連続休暇や各種 メモリアル休暇、そして近年では育児・介護休暇制度やボランティア休暇など、企業内にも時代の要請に応じた新たな休暇制度の整備が図られてきたことはその成果といえよう。
  しかしながら、労働者の余暇活用の状況を、その主な利用目的である「観光」という側面から見ると、依然として旧盆前後を筆頭に、ゴールデンウィ?ク、年末年始といった短期シーズンに集中している。そのことを誰よりも実感しているのは、私たち観光産業従事者ではないだろうか。日本全体で、あらゆる交通機関、宿泊施設等の観光関連施設が大混雑し、かつ費用が割高な時期であることは承知しつつも、会社の一斉休暇や子供の夏休みとの調整といったことが大きな背景となっているのだろう。およそ「バカンス」の実現とは程遠い現状である。
  たしかに、若者や高齢者層を中心とした個人・小グループの積極的な余暇志向は、その活動時期だけでなく、旅行形態の質的変化をももたらす可能性を見せ始めているが、一方で、特に30?40代のファミリー層、職場では働き盛りといわれる労働者には、職場に対する気兼ねも抜けきらず、余暇活用の柔軟性という点では、さしたる変化も見られないのが実態である。
  また、休暇取得の頻度という点では、年代という属性だけでなく、職種別にみても小売・サービス業や医療・福祉等の広い意味でのサービス業全般にその他産業との格差が見え始めている<財団法人余暇開発センター「長期バカンスのスタイルと ニーズに関する調査研究」(平成9年3月)参照>。日本経済のサービス化・情報化の進展が、その理想とする姿とは裏腹に、労働者の自由時間を不規則にしていることは明白であり、土・日や年末年始といった休日概念すら希薄化しつつある。「一緒に過ごす家族や友人と休みが合わない」という労働者は今後も増えていくことだろう。労働者の休暇取得推進は、もはや一企業内で完結しえることではなくなってきているのだ。
  現在レジャー・サービス連合では、小・中学生を対象とした「家族時間の充実」や「社会体験」などを可能とする「リクエスト休暇制度(児童社会体験休暇制度)」 の創設を新たな政策要求課題の一つとして取り上げ、取り組みを開始したところである。労働者の休暇時期が多様化しつつあるなか、一緒に過ごしたい子供の休みにも柔軟性はない。授業の欠席は進学時の内申書にも悪影響を及ぼすのだ。昨年来、観光労連旅行業政策委員会を中心に、文部省、日教組など産業枠を超えた領域も視野に入れつつ、そうした阻害要因を取り除くべく、制度創設への可能性を探っている。
  リクエスト休暇制度の導入が、これまで述べてきた労働者の休暇実態をあまねく改善するとは言わない。しかしながら、日本の社会全体に蔓延している休暇への抵抗感や新たな阻害要因を払拭する手がかりとして、まずは休暇の取得状況に「格差」が生じている層に焦点をあてながら、企業内外の環境を変えていくことの意義 は大きいと確信している。

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