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DATUMS 1997.06
路地裏に吹く風

横倉 佳鶴美  ちんどん屋朝日堂主宰

■よこくら かずみ
 1967年東京生まれ。フリーのイラストレーターを経て、94年にちんどん屋の道に入る。翌95年8月独立。ちんどん屋朝日堂を旗揚げ。横浜・寿町夏祭り、ワンコリアフェスティバル、労組のデモから町のお祭り、商店の宣伝まで、催事全般をこなす。日本の大衆芸能をこよなく愛し広めるべく、日々精進している。


  子供の頃によく見たちんどん屋。白塗り化粧の町娘や股旅姿のあの人達は、一体どこから来てどこへ行くのか。そもそも「ちんどん屋」とはどんな職業なのか?
  まだ町の中でちんどん屋を見かけることが今より多かった頃、一行は異質な空気を作りながらも、場の色にとけ込んでいた気がする。アスファルトの色、ネオンの色、人々の色に。
  大人になって、本当に久し振りにちんどん屋を見た時、これは今しかないと思い声をかけてしまった。どんな人がどんな風にこの仕事をやっているのか。昔からの謎を解きたい! そして気がつけば、ミイラとりがミイラに……私自身がちんどん屋になっていた。
  「ちんどん屋」とは、出張店頭宣伝員又は広告代理業。音楽家や芸能人でもなく、職人でもない。雇い主の元へお客を呼び込むために、演奏し、踊る。どちらかといえば接客、サービス業だと思う。炎天下でも、大雨でも、路上で演奏をするには、かなり高度な集中力や観察力が必要だ。何より肉体的にハードである。
  この情報時代の中で、私達ちんどん屋のような、狭く限定された区域での宣伝効果などまったく非力だ、と感じる時もある。
  美しく区画整理されたニュータウン、ビルの立ち並ぶ町では邪魔者扱いすらされてしまう。とけ込むべき色や匂いがない町がどんどん増えている。
  逆に、難なくちんどん屋を受け入れてくれるのは、ドヤ街だったり、外国人労働者が多かったり、地域の共同性の残る下町だったりと、それぞれ「濃い」色や匂いのある個性的な町だ。そして必ず面白い人間が暮らしている。
  そんな町の路地でちんどん屋は、猫の目や犬の目、子供の目や老人の目で一日を見ていたりする。足元から、何か社会の根っこの部分が見えてくるような気がするのだ。
  朝日堂は、デモや市民運動等の集会などでも積極的にちんどんをやっている。神戸の長田区の仮設住宅へも行ったし、在日韓国・朝鮮の人々の祭り、春闘など。もちろん商店の宣伝などの仕事も受けてはいるが、ちんどん屋自体の仕事は下り坂。若いのに何でこんな事やってるの? と言われる時もある。
  しかし、ここには日本の歴史の底辺に抑圧され、うごめいていた芸能の源(エネルギー)が感じられ、私はちんどん屋をやりつつそれに少しでも触れたいと思っているのだ。

●ちんどん屋朝日堂 Tel・Fax:03-3989-0035
 東京都豊島区東池袋2-16-1 渡辺ビル302

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