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DATUMS 1997.07
新しい働き方が地域を活性化

小川 泰子  生活クラブ生協神奈川副理事長

■おがわ やすこ
 1950年神戸市生まれ。72年大学を卒業後就職し、88年福祉クラブ業務委託世話焼きワーカーズ「ひまわり」を設立し、理事になる。神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会理事長などを経て、現在、生活クラブ生協神奈川副理事長、生活クラブ運動グループ福祉協議会会長。「参加型」や「市民」という言葉の意味を社会化するために、労働問題を切り口に考え、社会に提案していきたいと考えている。


  「働く=雇用労働」が労働の価値を貨幣評価でしか測れなくした。
  人が人として生きるには、「カネを稼ぐ」労働だけでは生きてはいけない。そもそも男性中心主義、企業資本優先社会が創り出した「雇用労働」は、多くの労働を無視して、企業資本の都合でのみ労働を評価してきた。
  「男は外、女は内」といった性別役割分業が不可欠だった企業資本の傲慢が、今、日本社会にさまざまな弊害をもたらしたことが浮き彫りになってきた。しかし、まだまだ労働評価を貨幣価値で測ることが「社会の常識」となっているのが現実である。
  21世紀少子・高齢社会は世界先進国共通の課題である。しかし日本はその高齢化が急速に訪れるため世界に例を見ない超高齢社会を迎えつつある。しかも日本の福祉政策は、行政請負型であり、経済的支援策つまり生活保護的福祉行政を中心としてきているので、「人が人らしく生きるため」の福祉政策はほとんどもっていないのである。「ほどこし福祉」といわれるのは「お上に面倒みてもらう」という意識を人々に与え、「福祉」という言葉を惨めにしたのである。英語で言うと「福祉=Well Being,Welfare」であり、幸福な人らしい生き方なのである。
  人が人らしく生きるためにはさまざまな労働が必要である。出産育児、子育て、教育、生活環境を守る、家事、近隣の支え合い、介護、健康管理等、人は死ぬまで何らかの労働で支え合って生きているのである。
  神奈川の生活クラブ生協を中心として生まれたワーカーズ・コレクティブ運動は、暮らしの中にあるあらゆる労働を評価し、豊かに安心して暮らしつづけることが出来る地域社会を創るために必要なコミュニティワークを社会化し、非営利事業で共同労働の場として起業し、雇用関係のない働き方を提起したものである。
  「もうひとつの働き方」として社会提起したこのワーカーズ・コレクティブ運動は、1982年から始まり15年になる。その間の拡がりは高度経済成長期の日本社会の中で、バブル期においても衰えることなく成長し続けた。それは企業資本拡大のために結集された雇用労働力の疲弊と、家庭地域社会に起こる物質文明主義の弊害に対する「警鐘」として人々がコミュニティの豊かさを強く意識していたからであろう。
  神奈川ではじまったワーカーズ・コレクティブ運動は特に女性を中心に展開してきているが、これは女性の労働運動ということではない。地域社会、家庭にある「生きるために必要」な労働が女性にアンペイドで担わされていたことの事実が女性中心としたのである。男性も女性も平等に仕事を持つことの条件整備であり、ペイドワーク中心社会からアンペイドワークの評価と労働の平等が、21世紀少子・高齢社会の基本的な生活基盤整備の最優先課題である。
  神奈川でのワーカーズ・コレクティブが展開している事業は、食関係、福祉、教育、環境、情報、物流等多岐に拡がっている。特に福祉関係は地域の生活ニーズがその供給拡大を促し、地域福祉に豊かさをもたらすとともに、福祉政策にもその実績は活かされている。そろそろ人々の労働観、生活価値観を転換し、コミュニティに目を向け、自分たちの暮らしに真の豊かさをもたらすことに真剣になる、そんな「良識」を持ちたいものである。

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