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DATUMS 1997.08
障害者の人権と安全を守るネットワーク
  :DPA (The Assembly of People with Disabilities)


工藤 泰  日本旅行労働組合中央執行副委員長

■くどう やすし


  障害者協議会(The Assembly of People with Disabilities:DPA)は、ウェリントンを拠点に活動していた様々な障害者支援団体が個々の運動の違いを乗り越えて結集し、1983年、個別の要求内容を包括するかたちで結成された連合体である。運営資金は、会費、寄付金及び政府・行政との契約に基づく障害者支援事業への交付金等によってまかなわれている。
  DPAが現在行っている主な活動は、(1) 定期的な広報誌発行、(2) 様々なNGOとの会合や意見調整、(3) 海外関連組織との連携、(4) 障害者全てが公平に情報を得られるシステムの構築、(5) 政府との契約に基づく障害者支援事業の実施等である。
 DPAが手がけた最初の大きな事業は、障害者のタクシー料金割引制度の導入だ。マスコミを通じた有名人によるチャリティー基金をもとに、ニュージーランド全国のタクシーへのバン自動車用移動式車椅子リフトの配布や、障害者のタクシー利用料金の50%補助を実施。その対象者は1ケ月に約9万人もの人数に及び、障害者の社会参加に大きく貢献することとなった。この成果を各市町村が認め、最終的には政府による割引制度として導入されたという。設立当初は、政府・行政からの反応は極めて鈍いものであったが、この取り組みが、ニュージーランドにおいてDPAの存在と力を認めさせるきっかけとなった。
  また、同協議会は1991年に成立した『全ての人が利用できる建物に関する法律』(The Building Act 1991)の成立にも大きな役割を果たしている。同法律は、1975年に初めて導入された強制力のない内容を一層強化したものであり、成立後はDPAの地道な働きかけ等が功を奏し、既存の建造物を含め、その施設内容は大きな改善を果たすに至っている。日本のハートビル法(建設省)や運輸省が策定した宿泊施設ガイドライン、さらにはJATAが今秋に作成しようとしているノーマライゼーションのガイドラインについても、あくまで強制力のないものであり、業界や行政への働きかけが急務であろう。
  一方、DPAのこうした活動には、1984年に始まる規制緩和以降、より広範な連帯が必要な状況になってきているという。その背景には、障害者の人権や安全が損なわれかねない経済性重視の政府の改革計画がある。DPAの政府・行政との契約についても、その使用方法や対策内容について弁護士に依頼して確認しなければな らないほど細かな制約を受けることが多くなってきており、独自の活動を実践する上での阻害要因となっている。
  DPAでは、こうした規制緩和の大きな流れに対抗すべく、労働組合やNGO、市民団体との連帯を強めている。特に「人権」擁護の面では、人権委員会(HRC)との連携のもとに政治活動にも力を入れているとのことである。
  現在、世界的に波及しつつある規制緩和は、その導入プロセスを含め、政府・財界からの攻撃そのものと言える。国家財政の再建、小さな政府、国民の自立した社会の実現は、現在の日本にとっても早急に実現しなければならない課題であるが、その際にどのような理念を持って行うかが重要である。そういう意味でも、ニュージーランドで今大きな流れを築きつつある民間側の運動は、私たちへの強烈なメッセージとなりうるであろう。

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