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DATUMS 1997.08
平和は儲かる

新城 和博  (有)ボーダーインク編集長

■しんじょう かずひろ
1963年沖縄島那覇生まれ、その後ずっと那覇。現在ボーダーインクに編集として勤務。シマーコラムマガジン『Wander』編集長。「まぶい組」という名前でおきなわに関する新しいタイプの出版物を試行錯誤しつつ編集。右左上下へだてなくおきなわものコラムよろず引き受けます。著書に『うちあたいの日々』『オキナワンうちあたいコラム《太陽雨》の降る街で』まぶい組編として『私の好きな 100冊の沖縄』『島々清しゃ』『島立まぶい図書館からの眺め』などがある(ボーダーインク刊)。


  「一国二制度」という言葉が、沖縄のあちこちで飛びかっている。沖縄の未来を見据えての提案らしいが、結局のところ、フリーゾーンなどの経済的な特典を与える代わりに「米軍基地」のプレゼンツを我慢しろよ、なっ! て感じで、きわめてうさんくさく、かつ危なかっしい。大体日本が、海の外に向けてお金を出す場合は、それ以上の見返りを作り出そうとするのは、ODAなんか見ても分かり切ったことで、沖縄も「祖国復帰」(苦笑)後やられ続けてきた公共事業などの補助金づけだって、まったくそうだ。自立的発展にほとんど役に立たないのは何故。「一国二制度」なんていうのであれば、普通、そこに自治権が発生しそうなものだが、みんな、銭ぬさんみん(金の計算)ばかりやって、なぜそういう状況に沖縄がなったのかとか、「沖縄と日本」の根本的な関係についての議論なりアクションなりが、国レベルで行われない。ごまかしごまかしで、その矛盾ばかりを沖縄内部に集約させようとしている。
  「基地を減らせ、無くせ」と言い続けて五十年近くたっているこの島で、何故いまさら、新しい米軍基地を海上に作ろうとするのか。そんな歴史の繰り返しの中で、いくら「今、沖縄が元気だ」なんて煽てられても、そんな国とつき合うのはもういい加減いやになってくる。
  ……はずなのだが、やっぱり元気だったりするから、自分たちでもわけわかんなくなる。先日那覇市の平和ガイド養成講座で講師としてお喋りしてきた。この平和ガイドとは、主に全国の修学旅行にくる高校をターゲットにしていて、那覇市役所職員がボランティアで平和学習ためのコースのガイドをしてくれる。その代わり、高校が宿泊するホテルや利用するバスは、那覇市の業者でなければならない。那覇市に具体的にお金をおとしてくれることがわかるし、また那覇市の基本姿勢のひとつである「沖縄から世界に向けて平和のメッセージを訴える」ことにもなる。
  養成講座の講師陣は、小説家、写真家、起業家、野球監督、芸能人、音楽家、などなど実に様々な人選で、普通の講演会なんぞよりよっぽど面白い。今年からは、民間企業からも講座に参加できるようになった。さて、成果はというと、一年目が49校ほどが那覇市の平和ガイドを利用し、今年もぞくぞく申し込みがあるという。つまり「平和は、儲かる」のである。「米軍基地も観光資源だ」という古い発想じゃ沖縄の未来は語れないのだ。今、那覇市の観光土産は、若者たちへの「平和の素」なのである。
  「一国二制度」という言葉でダンスする前にまだまだやれることはある。「沖縄の自立、個人の独立」への道は始まったばかりだ。

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