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DATUMS 1998.10
リスナーは大人たち

斉藤 道夫  FMえどがわ放送局長

■さいとう みちお
 1951年山梨県生まれ。東京都江戸川区在住。74年ラジオ番組制作会社「Gスタジオ」設立に参加、全国のAM・FM放送局のラジオ番組制作。以後フリーのディレクター・プロデューサーとして数多くのラジオ番組を手掛ける。制作現場大好き人間。心情「ラジオは心・ラジオは人」。


  『不気味な世の中』を楽しんでいないだろうか? 昨今の特殊犯罪に慣らされていないだろうか? 異常が普通になりつつあることに怖さを感じる。"少年犯罪""いじめ""キレル""毒物"……「まさか」の衝撃事件の連続である。
  いま不景気であるにせよ、日本は戦後50年経済的、物質的に豊かになった。しかし、有り余る物質的豊かさの中で無くしてしまったものはなかっただろうか? 『不気味な世の中』がその欠落したものを物語っている。目先の利益に溺れ、便利さに溺れた結果がバブル崩壊後の日本の社会であり、心も未来もないがしろにしてきた結果が『不気味な世の中』と言わざるを得ない。かなり前から、時代は「物から心へ」と言われ続けていた。「物の豊かさ」ではなく「心の豊かさ」、「物質優先の社会」ではなく「精神的豊かさの社会」が大切であると叫ばれていた。しかし……。
  前置きが長くなったが、現在全国で地域型のラジオ局、コミュニティFMが 100局を越えている。その82番目が昨年11月30日に開局した「FMえどがわ」である。開局当初から「こんなラジオ局を待っていた」「今のままの編成で続けてほしい」などなど手紙、FAXを頂戴した。最高年齢76歳の方からの手紙もあった。いま「FMえどがわ」のリスナーは大人たちばかりである(若者も多少いるが……)というのも、FM放送イコール若者のものというイメージが強いが、ラジオ文化は若者だけの為にあるのではなく、大人も楽しめる、特にシルバー時代を迎え、シルバーも楽しめる放送局があっても……、そんな意味合いと、平日の朝から夕方までのリスナーは大人たちが多いことから、大人のリスナーの多い放送局が誕生した。中でもこれまでFM放送を聞かなかった方々が聞いてくれている。理由は簡単で、いまのラジオは煩わしくて落ち着いて聞いていられない。「FMえどがわ」は目まぐるしく慌ただしい世の中、自分の生活精神リズムまでも狂わされている時代だからこそ、ゆったりと落ち着いて聞いていただける放送局づくりを目指して放送を開始した。
  番組タイトルも「ちょっと…しあわせ」「ひまわりサラダ」「12番目の好奇心」「風色の絵筆」「4秒の心呼吸」「晴れ・ときどき・散歩」「ひだまり7丁目」など温もりと優しさのある、いまどきのFMらしからぬ「FMえどがわ」の放送姿勢をタイトルに反映している。
  番組内容にも、江戸川区の天気・道路情報、防災・消防情報、区内の子供たちの詩・作文紹介、商店街情報、伝統文化・イベント中継、区内で活躍する各種団体・個人ゲスト出演など、生活に根差した情報満載である。
  『不気味な世の中』が『まっとうな世の中』になる為には、人間の豊かさ、生活者の豊かさ、地域の豊かさが実感できる社会づくりが必要である。地域のラジオは地域の人々の心の文化です。思いやりも優しさも薄らぐ世の中、せめてラジオに心を傾け、豊かな心を育む地域の放送局でありたいと願っている。

 ◆FMえどがわ 84.3MHz ……………………
  〒133-0065 東京都江戸川区南小岩7-13-8
  TEL:03-5622-7850 FAX:03-5622-7852

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