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DATUMS 1998.12
ソーシャル・レジャー」の芽生えと可能性

松澤 淳子  (財)余暇開発センター政策研究部副主任研究員

■まつざわ じゅんこ
 1962年東京生まれ。86年早稲田大学第一文学部哲学科社会学専修卒業後、(財)余暇開発センタ?入社し、現在に至る。自由時間政策をはじめ、文化振興、生涯スポ?ツにかかわる領域を調査研究中。著書『レジャ?産業の経営動向』(同友館)共著。


  「ソーシャル・レジャー」とは、一言で言えば、社会性を帯びた自由時間活動のことで、次世代へ向けた新しい余暇の方向性を示すものです。
  現代社会は、深刻な問題をたくさん抱えていることは言うまでもありません。こうした問題を認識することで、私たちは無意識のうちに、自分をとりまく地域や社会に対して関心を広げています。それは、生活の一こまである余暇においても同様に現われうるものです。
  私たちは従来、余暇は自分の気晴らしや楽しみの時間であり、しばしば日常生活から離れて開放感を味わうためにあると考えてきました。しかし今日、個人的な楽しみに止まらず、自らの問題意識を出発点として、社会に開かれた活動を行うという新しいタイプの余暇が芽生えています。人々は、自分の好きなことや得意分野の活動を社会的な交流を通して行ったり、それらを生かして社会問題の解決に役立つことに、高い満足感を覚えるようになっているのです。
  具体的には、たとえば、アウトドアレジャーの延長のような感覚で、植樹や下草刈りなどの森づくりに参加するのも「ソーシャル・レジャー」です。こうした活動に参加する人の数は急増しているという報告もあります(朝日新聞、10月27日)。図表にあるように「ソーシャル・レジャー」に対する参加希望も高くなっています。
  その他、創作・学習などの分野で一芸を持ち寄って互いに教え合ったり、ダイビング愛好者が海底のゴミや釣糸の散乱が自らのレジャー環境を損なっていると気づいて海底の掃除に乗り出したりすることも「ソーシャル・レジャー」と言えるでしょう。したがって「ソーシャル・レジャー」は、個人の興味や特技との接点で行うことが多いため、従来の「社会的活動」よりも自由で多様性のある活動となります。
  私たちは、すでに、趣味や自己啓発として、野菜づくりや草花の育成、陶芸・工芸や日曜大工などの物づくり、不用品を売買するフリーマーケット、パソコンを使った情報交換など、実際に日常生活で、さまざまな物やサービスを生産しています。これらの財・サービスを直接、地域や社会に提供することによって、多様な社会参加を実現することも可能です。そうなると、NPOのような社会性の高い非営利事業や、小さな市場を対象とした生活創造的なビジネス、たとえば、環境ビジネスやコミュニティ・ビジネス、介護・福祉ビジネス、カルチャービジネスなどに発展していく可能性があるのです。
  現在の、余暇のうち1割程度が「ソーシャル・レジャー」(非市場的生産)に転化し、さらにこれが新しい事業につながっていくと仮定して、活動時間総量をそれぞれの年齢階層別平均賃金で積算すると、25兆円もの規模になると推計されています。現在の余暇市場が84兆円ですから、その3割に相当します。これは、従来にない新しい市場創造や雇用創出にもつながると思われます。
  こうして「ソーシャル・レジャー」が、今後、社会・経済面で有用性を発揮することによって、次世代へ向けた新しい社会システム構築の一端を担うことが期待されます。つまり、自由な意思で自発的に行う「ソーシャル・レジャー」は、個人の多様な社会参加を促すものであり、「市民社会」における余暇のあり方として注目されるでしょう。

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