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DATUMS 1998.03
ストレスはもとから絶たなきゃダメ!

古谷 杉郎  全国安全センター

■ふるや すぎお
 1956年生まれ。(社)神奈川労災職業病センターから、90年全国労働安全衛生センター連絡会議(略称・全国安全センター)設立とともに同事務局長。共著:労働時間問題研究会『労働時間短縮への提言』(第一書林1987)、労災補償制度問題研究会『労災があぶない――わたしたちの提言』(東研出版1990)、『いのちの差別――外国人労働者の労災・医療』(社会新書14、1993)ほか。


  一昨年の労働安全衛生法改正にあたっても、労働者の健康をめぐる状況の第一に「高齢化の進展」があげられ、脳・心臓疾患等につながる有所見率の高さ、メンタルヘルス上の問題の拡大、「いわゆる過労死」問題の発生などが指摘されている。そのための法改正は、健康診断と産業医制度の一部改正という内容であった。
  マスコミでも、過労死、精神疾患、自殺、ストレスなどの問題が頻繁に取り上げられているが、どうも労災認定や裁判等の補償問題に偏りがちで、せいぜい早期発見・早期治療の必要性が言われるだけの場合が多い。
  残念ながら労働者サイドの取り上げ方にもそういう傾向があるようで、予防が重要とかけ声はかけてもどのように取り組んでいくかが見えてこない。長時間労働と人員不足が元凶として、労働時間の短縮と人員増を要求するものの、経営者側が受け入れないからそのままで、落ち着くところは成人病健診の充実といったところ……というと言い過ぎだろうか。
  しかし、「長時間労働と人員不足が元凶」ですませてよいものだろうか。カラセクという学者が仕事上のストレスと虚血性心疾患の発症頻度との関係を、?仕事の要求度、?判断(裁量)の自由度、?支え合い度(サポート体制)という3つの方向から検討している。
  「長時間労働と人員不足」は・の範疇に入ると考えられるが、むしろ??の方が効いていることがわかる。過労死研究で有名な上畑鉄之丞氏が、労災申請の相談を受けた過労死事例をこのモデルに当てはめてみたところ、過労死の発症モデルとしても共有できることが示されたとしている。私たちが日頃相談を受けている実感とも一致する。
  問題は、仕事の判断・裁量の自由さや職場(家庭、社会も射程に入れて)での支え合い(サポート体制)といった課題を労働組合が取り上げていけるのか、どう取り組んでいくのかということにつきる。ILOが1993年に出版した『仕事上のストレス』(邦訳はまだない)は、いくつかのヒントを与えているように思える。いくつかキーワード的にあげてみる。

●「個人のみを対象とした」調整――解決をのぞむ「個人対策」プログラム(健康診断や諸々のアンケート・テストなどもその典型だろう)よりも、作業・作業環境を改善する方が生産的である。
●労働組合が参加し、労使協同の委員会を設置できるかどうかが、成功するかどうかを明らかに左右する。
●作業改善の計画や論議に加わる労働者の数が多ければ多いほど、プログラムが成功する見込みは大きくなる。
●専門家の意見に頼って改善を図る場合は、部分的にしか成功しない。

  「事後対処型」あるいは「問題発見型」にとどまらず、「改善型」の取り組みがのぞまれている<連合「メンタルヘルスプロジェクト報告」の提起も興味深い>。私たちも模索している最中で、ストレス対策に有効な職場改善方法・改善ツールを開発すること、また、そのための職場のストレス要因の構造を調査・分析する手法の開発に取り組んでいる(安全センター情報1997年12月号参照)。

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