[BACK]
DATUMS 1998.04
新しい葬送の形とは

松島 剛  LiSSシステム代表

■まつしま ごう
 1937年生まれ。東洋大学社会学部卒業。20歳で出家得度し「如戒」に改名するが、97年帰俗して「剛」に戻る。現在、高野山真言宗功徳院責任役員、もやいの会事務局長、すがも平和霊苑代表、LiSSシステム代表、シニアライフ情報センター代表。著書『サイバーストーン――インターネット上の「墓」革命――』


  5年前に生前契約による死後事務処理の第三者委託システムとして、LiSSシステムを立ち上げた。以来 300を超えるマスメディアで紹介され、大きな社会的反響を呼んでいる。それはこのシステムが近未来的ニーズを先取りしたものであるからにほかならない。
  今日では、一人ひとりが自分流の生き方をすることが認知され、そのような生き方を求め実践する人々も多数いる。しかし生の延長線上にある「死」について我々の社会は、多様な選択肢を用意するに至っていないにもかかわらずニーズは大きい、こんな社会的要請を受けとめた結果のLiSSシステム立ち上げであった。
  しからば、多様な生前意思の死後における実現性は保証されているのか、当然保証されており、その根拠は以下のように要約できる。  
(1)民法897条による祭祀主宰者の指定
(2)民法1002条による負担付き遺贈を遺言で 担保
(3)1992年9月の委任契約の死後の有効性を認めた最高裁判例
  以上の3点を生前契約の法的有効性の担保要件としている。生前契約が有効だとなれば、従来遺族(相続人)の専管事項とされていた葬儀のありようは様変わりする。
  葬儀の主役は「死にゆく本人」ということになれば、従来死者へのおもんばかりや世間体、見栄などによって形成された葬儀そのものが変わらざるを得ない。どのように変わるのかというと、まず無駄な金は使わない。葬儀単価はおしなべて下降傾向。よって葬儀社の業績も軒並み減収、減益となる。
  80年代以降、多くのシンクタンクが葬送産業の未来はバラ色だと説いていたが、それは間違っていると私は言い続けてきた。その理由は日本の葬儀は香典葬といわれる如く、喪主とは宴会の幹事のようなもので、通夜葬儀で集まった香典で葬儀社への支払いを済ませるが、身銭を切るならもっとシビアになる。
  その香典は減る。理由の一つは長寿、仲間の参列者は少ない。二つは少子、子供が俗に云う出世をしていれば香典は多い、その子が少ない又はいない。三つは終身雇用制度の崩壊。生涯勤めると思えば部課長の親の葬儀に香典を出すが、契約社員ならその必要もない。
  要するに香典が減れば葬儀にかける費用を節約するしかない。このことに加えて意識の変化もあり、自分で自分の葬儀を企画する際余分な金は省く。さらに世相、有名人の「ジミ葬ばやり」が拍車をかけている。数(死亡者)は増えても単価が下がればおいしい商売とはいえぬ。
  では葬送産業に未来はないというのか、否そうはいっていない。年間の死者は確実に増え、死に支度の多様化が一般化すれば、今日では想像だにしなかった死に係わるビジネスチャンスが期待できる。すなわち「死後事務処理」の社会化、外注化が必然的に促進されることになる。
  「死後事務処理」とは何か、人が一人死ぬとこれに伴ってしなければならない事柄が膨大にある。葬儀、つまり遺骸の処理、処理に必要な死亡診断書や死亡届による埋火葬許可書の受領、そして土葬か火葬や埋葬、保険や年金そして税務上の手続き、夫が死ねば住居などの不動産の名義変更、電気やガスなど公共サービスの名義変更、自動車や電話加入権の名義変更、等々数限りなく発生する。一人暮らしではこれらの手続きに加えて家の片づけ、借家であれば公団など家主への返還業務等々、気が遠くなるほどの処理事項がある。
  これらを生前契約という手法を駆使して、ビジネスとして組み立て得たものが生き残ると私は主張している。

[BACK]