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DATUMS 1998.04
今こそ、専門性が問われる時――M.O.V.E.プログラムを通して

白崎 淳子  MOVEインターナショナル日本支部代表

■しらさき じゅんこ
 1962年東京生まれ。お茶の水女子大学大学院卒業。教育学修士。大学院在籍中より、不登校や学力遅れ等の子供の教育に関わる。95年よりMOVE(ムーブ)プログラムを日本に紹介する活動に携わり、昨年本部よりMOVEインターナショナルトレーナーの認定を受け、日本支部の代表となる。目下、人材・経済両面での組織づくりが緊急課題。


  MOVEインターナショナルは、アメリカ・カリフォルニア州に本部を置くNPOで、重度・重複障害児・者のQOL向上のための教育プログラムである「M.O.V.E.(Mobility Opportunities Via Education)」の普及と研究を活動の柱としています。
  現在このプログラムは世界14カ国で実践されていますが、アメリカの一地方の教育委員会・特殊教育部の中で生まれたMOVEが、わずか10年の間に世界中に広まったのには理由があります。
  それまで重度の障害を持った子どもは、治療の対象であっても、教育の対象ではありませんでした。障害が重ければ重いほど、その子どもへの働きかけは医療の側からのケアに重点が置かれていたといってもいいでしょう。もちろん教育的な働きかけや、理論が全くなかったわけではありません。しかしそれも専門家や教師が主導であり、子供自身や家族の意志というものはあまり重要視されない傾向にあったと思われます。
  それに対し「障害を持った子どもの時間は訓練のためだけにあるのではない、子供の生活を子供の手に取り戻そう、障害児の家族は子供と自分たちの人生をより豊かにするために医療、教育の分野を問わず積極的に専門家の力を活用しよう。」ということを具体的なプログラムにして目の前に示してくれたのがMOVEです。
  このプログラムの根底にある考え方はいたってシンプルです。障害があろうとなかろうと、人がやりたいことや、楽しいことはみな同じなのだということです。子供であれば、他の子が自転車に乗っていれば自分も乗りたいし、他の子が鬼ごっこをしていれば自分も歓声を上げてそこに加わりたいということです。それに対して日本ではまだ障害児は他の子供のように遊べなくてあたりまえ、という意識が根強く残っていないでしょうか。
  MOVEで何よりも大事なことは、本人が何をしたいかです。次に家族の希望が取り入れられます。その実現のために医療や教育の専門家はいるのであって、決して逆はあり得ません。本人の希望をかなえるためにチームアプローチの中で最大限に専門性を発揮してもらう。その時にこそ専門家の真価が問われるのです。
  障害を持った人々の手に、人生を取り戻そうという世界的な流れはもはや止めようがありません。日本もまた然りです。MOVEプログラムはその流れをさらに加速することになるでしょう。

<連絡先>
 MOVEインターナショナル日本支部事務局
 〒174-0041 板橋区舟渡3-17-2-201
       Tel/Fax 03-3967-4394

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