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DATUMS 1998.05
紙の白さに思う――リサイクルと経済性

半谷 栄寿  オフィス町内会事務局代表

■はんがい えいじゅ
 1953年福島県生まれ。78年東京大学法学部卒業後、東京電力株式会社入社。企画部、総務部において経営計画、業務革新を担当。91年古紙リサイクルの企画・実践を目指す企業NPO「オフィス町内会」を発足させ、事務局代表を兼務。94年立地環境本部地域振興担当課長として、首都圏の電源地域である福島県の地域振興に取り組み、日本サッカー協会・Jリーグの協力を得て、アジア初のサッカーナショナルトレーニングセンター・Jヴィレッジの構想立案、建設を推進。96年、Jヴィレッジの運営にあたる株式会社日本フットボールヴィレッジの設立に伴い、取締役企画営業部長として出向し、現在事業の確立をめざす。


  「ちり紙交換」という言葉が古紙リサイクルの代名詞のように言われていたのは、ほんの5--6年前のことである。古紙という有価物とゴミとを分別してリサイクルに役立つように協力しているのだから、その対価としてちり紙、ティッシュペーパー等をもらうのは当たり前だと今でもお考えの方が少なくないはずである。古紙リサイクルは、まさに「物々交換」の典型であった。
  今日、オフィス町内会が古紙リサイクルシステムの社会的定着に何らかの貢献をしてきたものとご評価いただけるのは、この物々交換をより経済的に納得できる仕組みに切り替える役割を果たしてきたからに他ならない。
  オフィス町内会の経済的なシステムには、三つの側面がある。まず、分別を社内の新しい習慣とした会員企業は、従来、古紙をゴミとして廃棄していた時の負担金28.5円/kgに比べ、18円/kgの経費で古紙を回収してもらうことができる。オフィス町内会は現在 150社、10万人の各企業の社員の皆さんが古紙を分別しているが、その合計は1年間で8千トンにも及ぶ。ゴミにするよりも10.5円/kgも会員企業の負担が安くて済むのだから、全体としては年間で8000万円以上もコストダウンになる。とかく景気が悪くなると、社会的活動を割愛するのが企業の本音であるが、オフィス町内会の場合、企業にとって景気に左右されないコストメリットがあるから、社会貢献への脱落者はいない。
  次に、古紙相場が低迷して回収経費が捻出できないと言われる回収業界に対して、オフィス町内会は、12円/kgの回収経費を支払うことを6年前、日本で初めて行った団体である。オフィス町内会には43社の回収会社がパートナーとして活動しているが、景気の波に左右されずに回収を続けることができている。ちり紙交換は、今や昔の話である。
  第3の経済性は、オフィス町内会事務局の独立採算である。企業の回収料金18円/kgから12円/kgを差し引いて残った6円/kgが事務局経費となるから、年間では4800万円の活動資金が確保される。4人の専従スタッフの人件費や現在オフィス町内会が最も力を入れている「白色度70」再生コピー用紙使用拡大活動の啓蒙費用などに当てることができる。
  白色度70活動は、オフィス町内会のめざす四つ目の経済性ともいえる。それは、製紙メーカーサイドの経済性が伴ってこそ、古紙リサイクルが経済システムとして社会に定着するということである。天然パルプ100%のコピー用紙と同じ白色度80の真っ白すぎる再生コピー用紙をつくるには、コストアップになる上、漂白剤を多めに使用するから環境にも負荷がかかる。オフィス町内会が推奨する、ほどよい白さ「白色度70」の再生コピー用紙は、製造原価が8%も低減することがわかっているから、量さえ拡大すれば、消費者もより安価な再生コピー用紙を使うことができるようになる。今は、天然パルプ物と白色度80の再生コピー用紙が主流だが、オフィス町内会の会員企業はもとより、環境庁や東京都、大阪府などの行政組織が次々と白色度70に切り替えつつある。
  行き過ぎた豊かさに反省が求められる今日、コピー用紙の白さを見直すことが、環境と経済を調和させる新しいライフスタイルやサービスのあり方の探求に繋がるものと確信する次第である。

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