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DATUMS 1998.06
古都・金沢のまちづくり再発見

陣内 雄次  地域づくりプランナー

■じんない ゆうじ
 1956年佐賀県生まれ。学術博士(金沢大学大学院自然科学研究科地球環境科学専攻)。金沢科学技術専門学校非常勤講師。94年市民グループ「身近な環境と子どもたちを考える会」を仲間たちと旗揚げ。95年より国土庁地方振興アドバイザー。論文に博士課程学位論文「地方小都市の広域的計画に関する研究」(98年)他多数。94年本と森の交換事業開始、本の街オープン。現在只見木材加工協同組合理事長を兼任。


  文化の香りや古き良き時代の面影が色濃く残る古都・金沢の現在の人口は45万人程度。平成8年に中核市に指定されている。中心街はコンパクトにまとまっており、適度な大きさの快適で美しい都市である。
  金沢といえば、兼六園、金沢城、長町武家屋敷跡などがあまりにも有名であるが、近年は、伝統的な金沢の魅力をさらに高める、市民によるまちづくりが活発になっている。長い歴史の上に培われた緊密なコミュニティと、伝統文化や歴史への誇りが可能にしたそれらの取り組みと金沢の魅力を紹介したい。
  金沢市は昭和40年代より歴史的町並みの保存に力を入れているが、4年前から市が市民との連携のもとにはじめたのが、小さな歴史的町並みを保存する「こまちなみ保存」事業である。これまでに数地区が保存指定されている。その中でも歴史的建物が多く残っているのが、金沢港に面する大野町である(金沢市中心街より車で約20分)。大野町の保存指定に先だって行われた調査研究に私自身携わった。
  町並みとしての連続性はないが、中心街の歴史的な町家建物と意匠を異にする、大野町の独自の歴史的建物の見学も興味深いのではないだろうか。大野町は漁業や廻船問屋の商いばかりでなく、加賀藩へ醤油を供給した醸造地として重要な役割を担っていた。このような生いたちを、今に現存する歴史的建物が語りかけてくる。
  こまちなみ保存地区の指定をきっかけに、醤油蔵を活用したユニークなまちづくりが始まっている。まちづくりグループの名称は「もろみ蔵運営委員会」であり、今年1月に、空き醤油蔵を改装したギャラリー&茶論(さろん)「もろみ蔵」をオープンした。喫茶コーナーでは飲み物以外に、醤油味のソフトクリームを販売しており、若い女の子に人気がある。
  また、地場産品の販売、陶芸、写真などの作品展示の他、毎月1回「蔵コンサート」が行われている(連絡先076-267-6638)。地元新聞などでも大きく取り上げられ、客足も順調に伸びているという。「もろみ蔵」では、大野町の歴史的建物の場所が分かる手作りの散策マップを無料提供しており、地元全体の活性化にも配慮している。
  金沢ならではの情緒にひたりたい方に是非参加してもらいたいのが、毎年4月に行われる市民手作りの「浅の川園遊会」である。金沢文化を体験し、金沢人の熱い思いに触れたいという方にはうってつけの祭りである。金沢では毎年6月の「百万石まつり」が全国に知られているが、今年12回目を迎えた園遊会も数万人の参加者があり、金沢を代表するイベントとなっている。老舗の旦那衆4名が中心となって、金沢の文化の発祥の地である東茶屋街など浅野川界隈と浅野川を見直そうと始めたものである。
  浅野川のたおやかな流れと満開の桜のもとで行われる園遊会の内容は多彩であり、四条流包丁儀式、仕舞い、水芸、お座敷太鼓、茶会などが、浅野川の中に設けられた特設ステージなどで、2日間にわたって展開される(連絡先076-221-2992)。多くの市民ボランティアスタッフに支えられている園遊会であるが、中には隣県の富山県から参加するボランティアもいる。園遊会の実行委員会としては、園遊会が契機となって、金沢文化継承のメッカとなる演舞場整備に結実することも望んでいる。
  園遊会をきっかけに、浅野川の河川敷が石川県によって市民の憩いの場として整備されるなど、行政のバックアップもあることから、演舞場の整備ゴールに近づきつつあるように思える。古都・金沢での歴史を活かした新しい町づくり新旧の魅力を多くの人に体験していただきたいと思う。

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