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DATUMS 1998.06
◆福岡市:「人が集う街」を構築―新たにアジアと伝統への視点

岡本 顕實  フリージャーナリスト

■おかもと けんみ
 1970年、早稲田大学第一文学部卒業。毎日新聞社入社。西部本社勤務を経て1985年退社、フリー活動に入る。福岡市を拠点に地元紙、中央の月刊誌、週刊誌等に寄稿。環境、開発、人権問題などのほか、自ら環境ボランティア運動に従事。


  最近、マスコミが福岡市を全国向けに紹介する時に、必ず枕ことばに使う表現のひとつに「日本一、元気な都市フクオカは……」というのがある。一体、何が「日本一、元気」なのか? 福岡市役所の数人の一線幹部に聞いてみたところ「サア? それはマスコミさん特有の表現では。われわれは、そんな言葉は使いません」と要領を得ない。しかし、もらった名刺の一枚には「よか街福岡、エキサイ都」と刷り込みがあった。ホンネがわかった。
  確かに今、福岡市は市全体が高揚した気分に包まれている。最近の日銀短観では、日本全体が景気後退の流れにある中、「これまで、全国で唯一、景気上昇傾向にあった福岡市が(傍点筆者)今回、減速状態に入った」と報告されたものの、それでも福岡市(と都市圏)の経済活力は萎んではいない。
  人口増加は相変わらず右肩上がりだし昨年五月には人口 130万人を超えた。都市としては全国8位である。周辺地域を含んだ22市町村の福岡都市圏では人口 220万人で、これも増加傾向をたどる。
  では現在、何が「元気印」を形づくっているのか。筆者の見るところ、以下の3点だと思う。(1)公共事業を中心とする都市インフラ整備事業(地下鉄、道路、人工島の建設)、(2)民間主導の都市再開発事業(昨秋、天神地区に三越が出店)、(3)観光・アメニティ事業。それに、近い将来構想としてハブ空港建設プラン(中部国際空港の次案)もある。
  中でも観光・アメニティ事業は福岡経済を支える重要な柱である。平成8年の入込観光客数は1500万人に迫った)。主要10施設の入場者数は同年、3200万人を超えた。人口 130万人の大都市に、12倍の観光客が押し寄せ、25倍のアメニティ人口の移動があるのである。こんな都市自体、全国的に珍しい。ちなみに東京都(人口1200万人)の観光客は年間100万人にも届かない。
  福岡市のこれほどの集客能力は 図 1 に見るように主に既設の5地区によるところが大きい。とりわけ、福岡ドーム球場(ダイエーホークスの本拠地)や博物館、図書館、海上レストランを配したシーサイドももち地区と、一昨年春にオープンしたキャナルシティの魅力は群を抜く。特に後者は年間、全国から1200万人が訪れる。13の映画館、劇団四季の常設劇場、ホテル、専門店が並ぶ。
  そんな構図の中に来年春、もうひとつの新しい顔が出揃う。博多地区の再生を賭けた再開発事業で、20万平方メートルの商業地区に総事業費1500億円を投じ、地上13階のビル3棟を建てる。ホテルオークラも開業する。
  博多地区の復興は悲願だった。川ひとつ向こうの天神地区の繁栄をシリ目に博多地区は古い商店街が並び、寂れ果てた。発案から4世紀、ようやく再開発がなる。「天神に負けないものを」。目玉は……。関係者は頭を悩ませた。そして劇場「博多座」と福岡市立「福岡アジア美術館」の開設にこぎつけた。前者は、かつての博多芸人の伝統を継ぐねらい。後者はアジアと福岡の新たな接点を探る。良い視点だと思う。
  昔から博多は芸どころ。博多どんたく(5月)博多祇園山笠(7月)は有名だし、最近ではタモリ、武田鉄矢など著名なタレントが輩出。そんな土地柄を生かし、歌舞伎からミュージカルまで、常設の劇場が「博多座」だ。
  また、アジア美術館は作品の展示のみならず、アーティストとの交流も行い、「アジアに開かれたフクオカ」の具現化を図る。

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