[BACK]
DATUMS 1998.07
遊坊(あそぼう)の手から笑い

水野 守久  手話落語研究会「笑草会」会員

■みずの もりひさ
 1949年東京生まれ.埼玉県三郷市在住。手話落語研究会「笑草会」会員。芸名「道楽亭遊坊」(どうらくていあそぼう)。手話サークル会長、街づくり市民ネットワーク事務局、三郷生涯学習ボランティアサークル代表、「みさと寄席」世話人。


  「エー、毎度ばかばかしいお笑いを一席申し上げます」さあ今日も手話落語の幕開けです。会場には聴覚障害者、健聴者、大勢のお客様がお集まりです。もう笑い声が聞こえてきます。
 「草加文化寄席」で草加在住の真打ち、林家とんでん平師匠が手話落語を演じました。それを見て、落語のおもしろさを知った聴覚障害者たちが、自分も演じてみたいと師匠に師事し、平成3年「笑草会」を設立しました。
  そのころ、手話落語が新聞で話題となり、私も早速師匠のところへ伺いました。「あなたも一つ落語をやってみませんか」林家とんでん平師匠の一言が、私が手話落語の世界に入るきっかけとなりました。
  祖父が視覚障害者でしたので、楽しみはラジオから流れてくる演芸だけでした。私は性能の悪いラジオをよく聞こえるように調整し、一緒に聞いたものです。ですから小さいときから落語は好きでした、もちろん聞くことがです。
  手話を始めるまでは聴覚障害者の方々の悩み、苦しみは全くわかりませんでした。私たちは当たり前のようにお喋りをし、音楽を聴き、テレビを楽しんでいます。しかし聴覚障害者の方々は「聞く」ことが出来ません。音が聞こえないので、当然娯楽も制限されます。
落語は言葉の遊びから始まりました。
  「隣の空き地に囲いが出来たね」「へー」聴覚障害者の人に手話で表わします。落ちのところの「囲い」と「へー」は手話の表現は違います。で、どこが面白いの? 囲い=塀(へい)=「へー」面白いでしょ。30分ぐらいかけて言葉の面白さを説明します。落語では「落ち」が大切というのを理解してもらいます。
  もう一つ問題が出てきます。私たちが普段使っている言葉に対して手話の単語がすべてあるかというとそうではありません。特に落語で使う江戸の様子や時間、物の名前等々。
そこで、話の内容を理解してもらい、言葉の意味を話し、それに合った手話を表わしてもらい、一つの話ができ上がります。時間はかかりますがそのプロセスがとても楽しいのです。
  バブル最盛期、企業が文化面を応援するということでかなり話題になりましたが、バブルが弾けるとともにすーっと消えていきました。景気の悪い今だからこそ、企業、商店街は地域の文化発展のためにも応援が必要なのでは!
  聴覚障害者も健聴者も今笑いに飢えています。一緒に楽しめる場所の提供が増えていけばいいなと思っております。それでは「お後がよろしいようで」……。

●手話落語のご用命はこちらへ!
 「笑草会」連絡先(道楽亭遊坊=水野守久)
 埼玉県三郷市彦成10-15-804
 TEL/FAX:0489-58-3198

[BACK]