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DATUMS 1998.08
災害時のNPOとボランティア活動

柏木 宏  日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)理事長

■かしわぎ ひろし
 同志社大学卒業後、渡米。ラトガース大学大学院労働研究科修了後、ロサンゼルスのNPOの職員、理事などを経て、現在、日本太平洋資料ネットワーク理事長。著書に『ボランティア活動を考える:アメリカの事例から』1996年(岩波ブックレット)『アメリカで仕事体験:NPOインターンシップの魅力』(1998年、アルク)など多数。


  阪神淡路大震災から早2年半の歳月が経過した。大震災に対する警戒感やボランティア活動への理解も、次第に薄れつつある。だが、災害は忘れた頃にやってくる。1989年にサンフランシスコ、94年にはロサンゼルスで大規模な地震を経験したアメリカでは、災害時にNPOとボランティアによる活動を効率的に推し進めるため、地域レベルでさまざまな取り組みが行なわれている。ここでは、アメリカで、NPOとボランティアの活動という備えを通じて、どのように憂いをなくそうとしているのかみていこう。
  サンフランシスコの観光名所、ゴールデンゲートは、太平洋とサンフランシスコ湾を隔てる海峡のうえにそびえ立っている。サンフランシスコ湾の東側、学生街のバークレー、ブルーカラーの町オークランドなどがある地域は、行政上、アラメダ郡と呼ばれている。89年のロマプリエータ地震で大きな被害を受けたアラメダ郡では、94年、災害対策連絡機構(CARD)が発足した。
  災害時には、弱者が最も大きな犠牲を強いられることが多い。CARDは、低所得者、障害者、高齢者、マイノリティなどに対する支援を中心に、総合的な地域防災体制の整備を目指している。CARDは、アラメダ郡を5つの地域に分け、数十の非営利組織(NPO)がそれぞれの専門領域で災害時の援助活動を分担するというユニークな方式を採用。具体的には、それぞれの地域で指導団体を決定し、ここを中軸として、食料、医療、住居、後方支援などの作業をNPOが分担して行なうというものだ。
  資料2のチャートは、CARDの具体的な組織形態を現わしている。チャートから明らかなように、単に地域を分け、NPOの日常活動に応じて、作業を分担しているだけではない。人材を提供するボランティア・センター、州の災害対策課、災害対策専門のNPOである赤十字などとのしっかりとしたネットワークを形成。災害時に、NPOが救援活動にスムースに入れるようになっているのである。
  阪神大震災のちょうど 1 年前、大規模な地震が南カリフォルニアを襲った。いわゆるノースリッジ地震である。ロマプリエータとノースリッジの地震の教訓のひとつは、「72時間は自分で身を守れ」ということだ。サンフランシスコやロサンゼルスでは、90年頃から消防局が中心になり、防災講座を開設、災害ボランティアの育成をスタート。ノースリッジ、阪神といった大規模地震の恐怖が現実のものとして感じられるようになったこともあり、受講者の数はうなぎ上りに増加している。
  ロサンゼルスのプログラムは、7課程、17時間に及ぶ。地震についての基礎的な知識を学んだ後、被災者の選別(トリアージュ)などのやり方も習う。最後に1チーム 5人のチームを作り、いかなる状況にも対処できるように訓練する。なお、クラスは、学校、地域、職場などを単位に編成されている。1クラスは平均66人。受講料は無料だ。講座を修了すると、修了書を授与される。労災保険の適用も受けられるようになるので、安心して災害活動に従事できる。
  サンフランシスコやオークランドにも同様のプログラムがある。ただし、地域の実情にあわせて、方式が多少異なっている。日本でも、それぞれの地域の実情にあわせ、こうしたボランティアによる自主防災プログラムやNPOの日常活動を活用した対策が検討されるべきではないだろうか。

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