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DATUMS 1999.02
障害者、高齢者に福祉機器選択の自由を!
 ―はじめの一歩は豊富な商品情報から


本田 千恵子

■ほんだ ちえこ
 1949年生まれ。大学卒業後、医療雑誌の編集を経て、85年よりフリーで医療、福祉雑誌に執筆。98年8月インターネット上での福祉機器情報誌 「kikiweb」を立ち上げる。NPO法人格を申請中。2児の男児のうち一人は重度障害児。
URL:http://www.kikiweb.com/


  2000年実施の介護保険を眼前に控え、セメントで固めたような福祉機器業界も地殻変動の動きをみせはじめている。その象徴的なできごとが外国製車椅子と家電業界の新規参入だろう。デザインや機能面で優れた外国製車椅子やユーザーのニーズを問い既存の機器の隙間をうめるような斬新な形態や機能をもつ家電業界製品の登場は老舗の車椅子業界を慌てさせている。
  こうした中、私たちは障害者や高齢者などに福祉機器の製品情報や評価などを提供するために昨年8月インターネット上の情報誌 「kikiweb」を立ち上げた。ユーザーとしての自立には、どんな機種がどれくらいあって価格はいくらで、この機種とこの機種はどこがちがうのか、また自分の身体にあう機器を選ぶにはどうしたらいいのか、などの商品情報や評価などが欠かせない。福祉機器関係ではこれまでそのような情報を伝えるものは業者のカタログと病院関係者の不充分な話しかなかった。
  またユーザーの「ここをもう少し狭くして欲しい」とか「こんな風に変えて欲しい」という要望も業者にはほとんど届いていない。「顧客ニーズの先読み」などという発想はこの業界にはなかったようだ。与える、という行政の姿勢を汲み取っていただけ。昨年福祉機器の商品データベースをつくるためにカタログなどを取り寄せ照会したところ車椅子では日本全国で 162業者(輸入販売なども含)、大人用紙オムツでは30強メーカー、製品では約500種(パッドも含む)もあった。
  こんなにたくさんの製品があるのにその実態や評価などが知らされないまま障害者や高齢者はごく限られた範囲(病院に出入りできる 2、3 の業者から)でしか選択できない。こんなアンフェアな話があるだろうか? 160以上の車椅子があるなら車椅子に身体を合わせるのではなく、自分にあう車椅子があるかもしれない。紙オムツでいえばこのメーカーではサイズなどがあわなくても全国規模で検索したらもう少し使い勝手のいい紙オムツと出会えるかもしれないではないか。とはいえ商品情報が豊富になってもすぐにユーザーが好みの製品を購入することはむつかしい。
  給付制度が流通の実質的な自由化を阻害しているのだ。介護保険実施後はレンタルを主とし費用を保険負担とするようだが選択肢はふえるのだろうか? ただし全額自費で機器を購入する場合は事情が異なってくる。新規参入組のメーカーでは裕福な高齢者層をターゲットに給付制度に頼らない販売戦略をとるところもあるという。また給付で購入する場合でもこういう商品があるので使ってみたいのだが、と病院や施設に話すことはできる。なぜこの業者を出入りさせないのかともう少しアグレッシブに掛け合うことくらいはできるかもしれない。
  こんな状態だが私たちは「機器選択はまず情報から」と位置づけ、つたない発信の努力を続けている。障害者や高齢者は商品選びだけでなく教育や就業、ショッピングや旅行、などあらゆる面で自身の意思や希望で選択できないような状況が現在でも日常的に続いている。福祉機器の選択を契機に生き方も自分で自由にデザインできるような社会を実現できたらと思っている。

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