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DATUMS 1999.04
信用のネットワーク

伊東 正明  スマートバレー・ジャパン実行委員代表

■いとう まさゆき
 1950年東京生まれ、76年東京大学工学部卒業後先端技術専門商社を経て、有志とともに96年スマートバレー・ジャパン(SVJ)設立、実行委員代表。 Business Cafe, Inc.会長、京都経済新聞社監査役。中小企業庁、建設省、国土庁等委員。NAB東京フォーラム実行委員、21世紀教育研究所専門委員等。


  スマートバレー・ジャパンは、カリフォルニア州シリコンバレーの地域活性化と生活の質の向上をめざす動きを日本で実現している民間任意団体(NPO)である。シリコンバレーというと、ハイテクベンチャー企業が次々と出現するアメリカンドリーム、サクセスストーリーの源であり、一年中、大勢の日本人の姿を見かけることができる。ただ、多くはビジネストラベラーであり、ゴルフなどを除いては、観光客の楽しみがない地域でもある。VC(ベンチャーキャピタル)、IPO(株式公開)、M&A(企業買収/合併)などの現代を象徴する言葉が乱舞し、毎週11社が生まれ、10社が消えていく、激動の地である。
  シリコンバレーのネットワークというと情報ネットワークに結び付けて考える向きが多い。情報ネットワークは、ハイテクの象徴であり、多くのニュービジネス創出を可能としているし、最近の米国株式の異常とも言える高騰の要因ともなっている。
  例えば、シアトルに誕生したベンチャー企業 amzon.com(アマゾンドットコム)は、未だに利益はあがっていないが、1995年にインターネット上に本屋を開店して以来、わずか3年で書籍の取り扱い高世界一に成長している。可能性のあるビジネスを、短期間にかつ幅広い地域で展開させるポテンシャルを、情報ネットワークが与えているのである。
ただ、これより大事なネットワークがある。そして、それがシリコンバレーでの起業の秘密でもある。
  立ち上がったばかりのベンチャー企業にとって一番辛いのは、資金不足である。しかし、それ以上に難しいのが信用創造であることは言うまでもないだろう。手持ち資金の範囲内でのビジネス展開を考えることはできるが、信用だけは、実績を積み重ねない限り得られないものである。こうした容易には得られない成功への道をアントレプレナーに与え得るのが、人と人の信用のネットワークである。
  人から人、企業から企業へ行われるバケツリレーを想像してみよう。“如何に効率良く、何を、安全に運ぶか?”それだけでニュービジネスの種をつくり出せるかも知れない。しかし、同時に、それ以上に大事なものは、そのバケツに込めた想い、持つ手のぬくもりを伝えることではないだろうか。自分が信用している人が信用している人ならば、初対面でも自分も相手を信用できる。
  “ここの会社はいい”、“ここのホテルは泊まる価値がある”そんな言葉を、無条件に受け入れ、次のステップから始めることができる。その信用の基盤づくりには、金で買うことのできない永年をかけた信頼関係の継続が必要となる。それ以前に、代償を求めない利他の心が必要となるのである。

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