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DATUMS 1999.04
歴史は誰がつくるのか? 市民の記録を後生に残そう

矢澤 直子  住民図書館スタッフ

■やざわ なおこ
 東京都生まれ。編集プロダクション勤務を経て、88年よりフリー。現在、住民図書館に関わるとともに、阪神・淡路大震災の被災地をはじめ全国各地の市民資料を巡るさまざまな現場を歩いている。


  歴史は誰がつくるのか――それは、突出した事件の関係者でもその時代の権力者や著名人でもなく、最も無名で最も平凡な最も多くの人たちではなかろうか。そうした人々、いわば「市民」や「草の根」の記録を抜きにしては真の歴史は語れないはずである。しかし、日本においては、そうした市民の記録・資料類はほとんどなおざりにされてきたと言ってよい。
  近・現代の市民の記録については、一部の公共図書館の郷土資料室、社会教育施設、地域の歴史資料館、文書館、あるいは各分野の団体・機関、大学等で収集・保存されている例があるが、多くが他の図書や資料の付随的な扱いであり、また、その実態もほとんど把握されていない。
  「住民図書館」は1976年の設立以来、一貫して市民活動に関する資料(ミニコミ、ちらし・パンフレット類、資料集など)の収集・保存・公開を行ってきた市民団体である。現在、約 5,000種類、点数にすると10万点を超す資料が保存され、その約半数が一般に公開されている。当初は住民運動資料がほとんどであったが、次第に団体・サークルの機関誌や個人誌なども増えてきており、現在では、全国各地から市民活動のあらゆるジャンルにわたる資料が送られてくる。
  しかし、市民資料は、多様性、不明瞭性、散逸性、稀少性などの特徴を持ち整理が難しいうえに、通常の図書類に比べて紙やインクの質が悪い、製本されていないので損傷しやすいなど保存上の問題もあり、その収集・保存には多くの困難が伴う。また、増え続ける資料の保管スペース、資料整理の人手や資材費の問題など、会費や寄付に頼り、全員がボランティアでの運営は非常に厳しく、住民図書館は現在も存続の危機に立たされている。
  このように住民図書館の将来は必ずしも明るいとは言えないが、全体としては、市民の記録や資料に対する関心が最近少しずつではあるが高まってきているように思う。
  まずひとつには、阪神・淡路大震災を契機に被災地でさまざまな記録・資料類を後世に残そうという動きが出たことである。現在も資料の収集・保存活動や、被災者からの聞き取り調査が地道に続けられている。しかし、震災から4年が経ち人々の関心や記憶も薄れてきており、貴重な資料が廃棄されている例も少なくない。
  もうひとつは、NPO法が施行され市民活動や地域への関心が高まっていることである。今後、市民の活動が活発化するなかで、市民の記録の果たす役割も大きくなっていくと思われる。
  資料や記録は、残そうと思った時には既に散逸し、失われていることが多いものである。NPO元年と言われるいまこそ、市民の記録を市民全体で守り、後世に伝えていくことを真剣に考える時ではないだろうか。

●住民図書館
 〒169-0074 東京都新宿区北新宿4-31-2 ST北新宿ビル 
 TEL/FAX03-3361-4060
 http://www2u.biglobe.ne.jp./~jumin/
 開館日……月、水、金、土(祝休み)

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