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DATUMS 1999.06
市民が評価する意味

粉川 一郎  三重県NPO室市民プロデューサー

■こがわ いちろう
 1971年神戸市生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了。現在「三重県NPO室市民プロデューサー」。民族学をベースにオンラインコミュニティの研究活動に従事し、藤沢市市民電子会議室実験、三重県のNPO情報システム構築に中心的に関わる一方、NPOや行政の事業評価を行う「市民による事業評価検討グループみえ」で事業評価システムづくりを行っている。


  三重県は協働の先進県と言われています。ともすれば敵対しがちな行政と市民がパートナーシップを組み一緒に事業を行っています。
  98年度に私たち市民は三重県NPO室と一緒になって様々な協働事業を行ってきました。その中で、私たちは、ただ漠然と行政との協働を押し進めるのではなく、事業を担った主体の一人として、進行を管理し、業務を改善していく必要があると感じました。しかし、事業を改善していくには課題を明確にする必要があります。そのための手法として、私たちが選択したのが「市民の手で評価システムを作る」という形だったのです。
  お仕着せではなく、主体的に行動するためのツール、そのための解答が「市民による事業評価システム」でした。当然、評価システムの内容は批判にとどまりません。事業の進行過程を4つの柱、「予算・企画力」「実施・運営力」「市民参加度・公開制」「市民社会への貢献度」に大分類し、それぞれに5段階評価方式の5個の設問項目をもうけることで、事業のどの部分に問題があり、どこを改善すれば良いのかが明確になるようなシステムを作成しました。
  もちろん、内容は平易でわかりやすく、誰もが簡単に利用できるようになっています。しかも、マネージメントに不慣れな事業主体者のために、この評価システムを実践していくことで、適正な業務マネージメントが理解できるような配慮も行っています。また、結果についてもレーダーチャートや棒グラフで視覚的に表現することで、わかりやすさを重視した作りになっています。
  こうしてできあがった評価システムは、実際に98年度の行政と市民の協働事業を対象として利用され、その評価結果は、みえNPOパートナーシップフォーラムの場で発表されました。もっとも、日本人の多くはまだまだ評価という概念になれていません。実際このパートナーシップフォーラムの場でも「市民活動を点数では評価できない」などの感情的な批判も出てきました。
  しかしながら、私たちはそうは考えません。市民であろうと、行政であろうと、あるいは企業体であろうと、社会において事業を行う主体である以上、自分たちがどういった事業を行っているかを正しく見直し、評価していく責任を背負っています。また、評価を行い、事業改善を行っていくことで初めて、この厳しい社会状況の中で事業主体として生き残っていくことができるともいえます。
  また、評価には意外な効用もあります。立場の違う者同士が一つの評価システムを持つことで、共通の話し合いの尺度、コミュニケーションのきっかけを得ることができます。行政と市民の協働事業のような立場の違う者同士の協働の場では、こういった評価システムの機能は大変重要な意味を持ちます。
  今回、私たちの作成した「市民による事業評価システム99」は事業主体自身が評価を行う「内部評価」に分類されるものです。現在、私たちは、事業の対象者である受益者が評価する「受益者評価」のためのシステムを試作し、三重県のイベントである「東紀州体験フェスタ」にてフィールドテストを開始しています。今後、内部評価や受益者評価を充実させる一方、総合的に事業や事業体を評価する第三者評価のシステムも構築していく予定です。
  評価を前提にすれば、いい加減な事業を行うことはできません。評価は、事業主体者が社会において生き延びていくためのサバイバルツールと言えるでしょう。

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