[BACK]
DATUMS 1999.06
正しい医療情報は自分たちで

上田 寧  市民の医療ネットワークさいたま代表

■うえだ やすし
 1948年千葉生まれ。72年早稲田大学卒業。86年のチェルノブイリ原発事故を機に市民運動へ参画。92年に5人のメンバーで「市民の医療ネットワークさいたま」を設立。埼玉県内の様々なグループとのネットワークを広げながら、医療情報の開示・共有の運動を進めている。現在、市民の医療ネットワークさいたま代表(3人のうちの1人)。


  市民の医療ネットワークさいたま」は、1992年、誰もが安心してかかれる地域の医療体制・医療水準をつくるために活動する市民団体として誕生しました。
  私たちの活動の柱は、地域の医療情報を市民が共有するための取り組みで、それは「良い医者さがしアンケート」を通じて、一人ひとりの市民が実際に受診した医師や病院に関するプラス評価とマイナス情報を集めて突き合わせる作業が中心です。
  そして、その作業のなかから、市民に顔を向けてくれる医師をホームドクター候補としてリストアップして、市民の側から積極的に医師とのコミュニケーションをはかる取り組みを進めています。8年間の取り組みのなかで5274人の方々から寄せられた記名アンケートにもとづき集約された2207人の医師・歯科医師のなかから 325人を、ご本人の了解を得て、『市民が推せんする信頼できるお医者さんリスト』で公表してきました。
  さらに、そうした医師・歯科医師をゲストにした「お医者さんと話す会」での膝を交えた話し合いや、自分の使う薬を記録する『私の薬歴ノート』、情報共有をさらに進めるための『医療と福祉のネットワークガイド』などで、自らが受ける医療行為について、聞くべきことをきちんと聞き、言うべきこともきちんと言えるような患者に成長するための運動を積極的に展開しています。
  私たちの取り組みは、「医療サービスを評価する」というより「ホームドクターを探す」ものですが、様々な相談や苦情という形で医師・歯科医師のマイナス情報も数多く寄せられており、市民・患者による医師や病院評価の要素が芽生えていることも事実です。
私たち市民が一番知りたいのは、医師・歯科医師の腕(技術・経験にもとづくトータル力量)です。しかし残念ながら、サービス購入(受診)前にはほとんどそうした情報を得ることが出来ません。情報のないまま受診するか、友人や知人の口コミ・風聞をたよりに医師・歯科医師を選ぶ以外にない状況がいまも続いており、「良い医者を知りたい」という市民の願いは以前にもまして強いものがあります。
  専門家でないごく普通の市民が選ぶ「信頼できるお医者さん」の評価にあたって、当然「何をもって信頼に足るとするのか?」という大きな課題があることは事実で、とくに医療者側からは「たんなる人気投票」「患者あしらいの良い医者が選ばれる」「専門性の評価がない」等の批判があります。
  私たちもそのことにはまったく同感で、何とか医療関係者がより専門的な視点で見た客観的で公正な評価をして欲しいと申し入れていますが、公に公表する形での評価はできないとのことで、残念ながら医療者側からの自主的なサービス評価は進みそうにありません。
  たとえ不十分であったとしても、私たち市民・患者一人ひとりが医療を受けるときに、病気のこと、薬のこと、検査のこと、自分で知りたいと思っていることをきちんと聞くことによって、医師・歯科医師の姿勢や医療内容を点検・評価し、その情報を市民みんなで共有することから「情報の公開」と「医療サービスの評価」が進むのではないかと思っています。
  「市民の医療ネットワークさいたま」は、今後さらに多くの市民の協力を得てアンケートに取り組むなかで、医療情報共有の輪を大きく広げ、真に評価に値する正確な情報を集積して、いつでも誰もが気軽に正確な医療情報をとりだせる地域の医療情報センターをめざして、着実に取り組みを進めていきます。

[BACK]