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DATUMS 1999.06
日本は評価の時代へ―オカミ一任から自己責任へ

山岸 秀雄  (株)第一総合研究所代表取締役

■やまぎし ひでお
 1946年生まれ。69年法政大学社会学部応用経済学科卒業。日本電信電話公社勤務を経て現在、(株)第一総合研究所、(株)第一書林の代表取締役。NPOサポートセンター代表。経済審議委員、労働省、通産省、文部省、自治体のボランティア・NPO関連の各種委員、委託研究調査を実施。NPOと非営利・協働セクターの可能性の追求など、社会への提言活動を行う。東洋大学大学院、江戸川大学講師。主要編著書に『市民がつくる地域福祉』共著『NPO時代の幕開け』他がある。


  日本のタテ型社会と、オカミ一任体制がくずれ、社会システムや個人のライフスタイルにいたるまで新しいルールが本格的に問われる時代になった。
  タテ型社会の上からの規制が弱まり、情報開示、評価、責任のシステムを築こうとしている。経済・企業は投資(資本)を、行政は厳正・効率性と納税者の同意と支持を、NPO(民間非営利組織)は支援という資源を社会から効率よく吸収するため評価基準を定めるといってよいであろう。
  アメリカでは債権に限らず、あらゆる金融商品、金融機関を格付けし、株式市場でも証券会社が個別企業や業界の格付けを常時公表し、個人も信用力の格付けによってクレジットカードの使用範囲を決められている。
  ムーディーズが債権格付けを始めたのは90年も前であり、格付けはまさにアメリカ資本主義の生命線になっている。
  アメリカNPOも企業格付けに参加する。平和や環境問題の価値観に沿った企業実態を分析・評価して、NPOサイドのミッションにそった投資や消費をよびこんでいる。最近ではカリフォルニア州にあるNPO・JPRNが『アメリカ企業の社会貢献度──コカ・コーラからIBMまで30社を評価』を発刊して、環境保護、女性問題、少数民族、寄付活動など8分野で企業の社会貢献度をABCで評価した。
  電機連合総合研究センターが『良い会社・悪い会社』を発刊し、日本を代表する 349社のランキングを発表して話題をよんでいる。働きやすさ、経営者の役割、株主重視、情報公開、社会的責任など多様な指標で総合評価を行っていて読み物としてもおもしろい。
  ホテルの評価、駅の「やさしさ指標」(運輸省)、医療・福祉サービスへの評価事例が増え、病院や特養ホームなどの施設オンブズマンも続々と現われている。当初は大方の施設は評価を嫌う傾向が強かったが、最近では事業継続のための質の確保、他者との競争のために積極的に評価を受ける傾向が強まってきた。
  通産省はサービス産業への評価・格付け機関を発展させ、ビジネスとして育成することを狙いとする「サービス評価のあり方に関する検討委員会」を設け(筆者も委員)、消費者からの苦情の多い4業種(外国語教育サービス、家庭教師派遣サービス、学習塾サービス、エステティックサロン)を選んで情報開示基準づくりの作業に入った。
  この委員会には毎回30人程の関係者(旅行業、葬儀社、ゴルフ業など)が傍聴席にすわり、最後に発言を求められ、委員に反論を加えるなど、けっこう楽しめる委員会である。
格付けビジネス化を目的とした応募者による実際の評価がインターネットを通じて公開されている。
  経済活動、企業セクターへの評価が一連の動きの主流を占めるのは当然だが、行政セクターへの評価、市民セクター(NPO)への評価も始まっている。行政への評価作業に最も積極的なのは三重県だが、他にも積極的に取り入れる行政が増加している。
  NPOへの評価は経済企画庁が「個人の参加を促すためのNPO情報に関する調査研究委員会」を設けて判断基準の整備の検討を始めている(第一総研受託)。
  NPOはこれまで行政などに情報公開を迫る運動をしてきたが、公共サービスの担い手としてNPO法人格取得が始まり、NPO自身によるNPOの情報公開を目的にした団体データベースづくりがNPOサポートセンターを中心に始まっている。
  評価の主体としてNPOへの期待が高まっているが、情報公開法も成立し、日本も遅ればせながら市民社会へのツールを準備したと言えるが、使いこなしはこれからである。

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