九地協サマーセミナー2000:パネルディスカッション 
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九地協サマーセミナー2000:博多より、バリアフリーを考える
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■マーケットとしての広がりがバリアフリーを加速する




講師:鶴田 浩一郎 氏

ホテルニューツルタ社長
内 藤  つづきまして、鶴田さんにはホテル産業のバリアフリーに対する取り組みの展望も交えてコメントいただけますでしょうか。

鶴 田  関連したお話で別府駅について触れさせていただきますが、やはり樋口さんのご指摘のように、車いすにはエレベーターが最適です。しかし、JR駅のような公共的交通機関の施設を改善するには、官民の力が不可欠で、労働組合の皆さんなどがかなりの力をもって地域運動に当たらないと、エレベーターはもとより、エスカレータすら設置させるのは難しい。別府では、旅館や観光産業の有志を中心に政治も一緒になった地域運動を巻き起こして、ようやく昨年度JR九州では3つ目のエレベーター設置にごぎつけたというのが実態です。
  一方、ホテルの問題というのは実は単純でして、最大の課題は部屋風呂の段差です。90年代、特に95年以降に建てられたホテルでは、ほとんどがバリアフリー対応となっていますが、80年代以前のものでは建物の構造上、全面解消するには建て直しをしなければならない。ですから、車いす利用の方々にとって最も便利なのは、実は公共施設の方が多いというのが実態のようです。しかし、少子・高齢化社会の到来が本格的に予見され始めた95年以降、小さな改装から徐々にバリアフリーへの対応が広がりつつあることも事実です。昨今の不況下で設備投資も足踏み状態ですし、多くのホテルが表立ってバリアフリー対応を謳える状況には至っていませんが、高齢者の方々と併せ大きなマーケットとしての展望が開けてくれば、こうした設備投資もますます進むに違いないと思っています。

■社会的基盤の整備とともに顕在化する多様な旅行ニーズ




講師:寺崎 嘉幸 氏

(株)トラベルジャーナル九州支局長





内 藤  ただいまマーケットというお話が出ましたが、寺崎さんは旅行業でも長年ご活躍をされていましたので、そのご経験も踏まえて、旅のバリアフリーに関する観光業界を取り巻く環境はどのように変化してきているのか、そのポイントご紹介ください。

寺 崎  本日の皆さまのお話をうかがいながら、かつて「1978年福岡県希望の翼」という障害者の方々のハワイ旅行(ジャンボ便チャーター)を手がけたことを思い起こしました。当時はまだ、空港、航空会社、ホテル、バスと、どれをとってもバリアフリー対応の施設はありませんでしたし、「福祉を食い物にするのか」「リスクが大きすぎる」と言われるような時代で旅行会社にもビジネスとして積極的に関わろうという姿勢はありませんでした。しかも、参加者の障害の状況や度合い、そして車いす一つとっても様々で、交渉や人海戦術を図るにもその都度知恵を絞らなければならない。今思えば大変な時代だったわけですが、実は今でも障害者の方々が千差万別であることに変わりはなく、ホテルにしても、ハードはこれを整えていれば大丈夫ということは言えないと思うのです。
  1990年にアメリカでADA法(アメリカ障害者法)が施行されて以来、日本でもハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)や、直近では交通バリアフリー法が制定されるなど、バリアフリーに向けた社会的基盤も整いつつあります。そして、障害者の方々の旅行意欲も旺盛になり、マーケットとしても認知されてきました。だからこそ今は、サービスを提供する側、受ける側、そしてそれらをコーディネイトする旅行会社という三位一体の中で、お客さんのニーズも的確にとらえていかねばならない。そんな時代になってきていると思います。高齢者・障害者のマーケットに対して、旅行会社でも障害の種類、度合いによって専門家の意見を十分取り入れた、安心して参加でき、喜んでもらえる旅行商品の開発を重視するような動きも見られます。これも、そうした背景の現れだと言えるでしょう。
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