レジャー研2002・パネルセッション
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“マイ・エージェント”“マイ・ホテル”を目指して
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□パネリスト
  真柄 徹 氏 (近畿日本ツーリスト クラブツーリズム湘南販売センター支店長 <現在横浜支店長>)
  多 桃子 氏 (ホテル西洋銀座チーフコンシェルジュ、レ・クレドールジャパン名誉会長)
  大庭 広巳 氏 (リクルート・アバウトドットコム・ジャパン取締役兼COO)
  林 光 氏 (博報堂生活総合研究所主席研究員)

□司 会
  内藤 義治 (RIC事務局長)


司 会
  第2部では、「“マイ・エージェント”“マイ・ホテル”を目指して」というテーマで、観光業界における具体的な事例を参考に、「顧客から支持されるための仕組み作り」について学習してみたいと思います。
  最初は近畿日本ツーリスト・クラブツーリズム湘南販売センター支店長の真柄徹さんです。真柄さんが所属されるクラブツーリズムは、会員制クラブやカルチャーサークルなどを通じて顧客に近づき、また時には顧客と一緒になって商品開発を進めるという運営スタイルで旅行業界では異色の存在となっています。そのコンセプトや運営上の工夫についてお話し頂きたいと思います。

■“クラブツーリズム”への3つの視点

真柄徹氏

真柄 徹 氏

KNTクラブツーリズム
湘南販売センター支店長

(現在は、横浜販売センター支店長)

[profile]
  クラブツーリズムの原点は、昭和58年発行開始の「旅の友ニュース」に遡ります。これは現在の「旅の友」の原型となるものですが、発行を始めた頃はタブロイド判の新聞程度の薄い冊子で、発行部数も約3万部しかありませんでした。その頃は私たちの店舗は、いわゆる一般客のひとつの渋谷営業所であり、メディア販売の草創期にあり、新聞媒体を中心にして比較的少品種の商品を大量に販売することで成長していました。その後の20年余りの間に「旅の友」の発行部数も、100倍以上の350万部に拡大しました。この過程で、クラブツーリズムのコンセプトである「顧客に近づく」という考え方が自然発生的に生まれたのです。
 
 それでは、私たちがどのように変化していったのかを、3つの視点から説明していきます。
 
 まず1つ目の側面は「顧客」です。大量販売によって大量の顧客データも蓄積しましたが、その履歴は全く整理されていませんでした。繰り返し利用されるお客様であっても特別にフォローはせず、全て一見客としか捉えていませんでした。そうした状況を反省し、一見客を常連客へと変えていこう、「顧客」から「個客」へと変えていこうという考え方が生まれてきました。そこで1991年に現在のクラブツーリズムの原点となる「旅の友サークル」を立ち上げました。その時のコンセプトは「個客が関心を持つテーマ毎にサークルを作り、これを通じてお客様との距離を縮めていこう」というものです。この考え方は、現在私たちが取り組んでいる「クラブ1000構想(=2010年までに1000のクラブの設立を目指す)」に引き継がれています。
 
 またサークルの運営方法もこだわりました。一般のカルチャースクールのように受け身の講座ではなく、お客様自身も運営に関わり、一緒になって何かを作り上げる「顧客参画型」というスタイルを当時から意識していました。
  2つ目は「商品」です。昨今の主催旅行商品は低価格志向が強まり、その結果として関係協力機関も含めた業界全体の経営を圧迫する要因となっています。したがって価格ではなく内容に魅力のある商品を作っていく必要があると考えました。そこできめの細かい商品作りを目指し、まずは地元発着などの「地域密着」で利便性をアピールすることにしました。首都圏にサテライト店舗を展開していったのはこういう理由からです。
 
 それと同時にツアーの内容そのものも、観光が中心ではなくテーマ性のあるものに変えていきました。つまりお客様の夢や感動、生き甲斐などの実現に結びつけることで、今までの観光(物見遊山的)主体の旅行業のスタイルから「余暇・生きがい創出産業」へと転換していこうと考えたのです。
 
 3つ目は「メディア=媒体」です。極論ではありますが、私たちは300万通りの「旅の友」を作ろうと言っています。これは居住エリア別は勿論のこと、お客様一人ひとりの趣味・趣向にあわせた「旅の友」作りを目指そうということです。しかし実際に300万通りの「旅の友」を印刷しているわけではありません。お客様の旅行履歴をもとに、写真が好きな人には写真のツアーを、山歩きの好きな人には山歩きのツアーを切り分けて入れるようにして、お客様の関心のあるものだけが届く仕組みにしたのです。
 
 また、私たちは印刷物だけを媒体とは思っていません。クラブツーリズムには“フレンドリースタッフ(以下FS)”という職種の社員が全国で約600名います。ほとんどが女性ですが、彼女たちには「添乗員でもなく、営業担当者でもなく、“ヒト媒体”になって欲しい」とお願いしています。彼女たちは年間で最低60日間は添乗に出掛けますが、添乗先でお客様と直接触れあい、お客様を理解し、ニーズをつかみ取る。そしてまた、それを旅行商品に生かすという繰り返しです。このことが彼女たちの役割なのです。彼女たちはいわば「旅の総合プロデューサー」とも呼べる新たな専門職なのです。
■“顧客参画”によるクラブ運営のメリット

  次にクラブ運営のポイントについてご説明します。
  現在クラブツーリズムには約150のクラブがあります。クラブは色々なジャンルに分かれており、例えば“知識を深める”のジャンルには「世界秘境クラブ」、“出会いと交流”のジャンルには「中国5千年クラブ」と言った具合です。
  私たちはクラブを運営するにあたり(1)お客様を知る(2)お客様との関係を強化する(3)お客様を満足させる この3つのステップが重要と考え実践しています。
  具体例として、「鉄道大好き倶楽部」を参考にご説明します。
  このクラブが出来たきっかけは、今まで参加されたお客様から「もう少しゆっくり旅がしたい」という意見がたくさん寄せられたことです。それでは旅行会社の強みを発揮しようということで、列車を使ったゆとりある旅を提案するサークルを平成11年10月に立ち上げました。現在の会員数は首都圏を中心に約800名になりましたが、このクラブは決して鉄道マニアの集まりではありません。現役をリタイアされた60代、70代が中心のゆっくり旅行がしたいと思う人たちの生き生きとしたコミュニティなのです。
  このツアーで特筆すべきことは、今までの催行率が100%、つまりツアーキャンセルが一度もないことです。ツアーキャンセルは主催旅行の永遠の課題とも言われていますが、これは売り手と買い手の意識のミスマッチのために発生するものです。しかしお客様のニーズを理解したうえでの企画、あるいはお客様が直接企画に参加というスタイルであるため、ほとんどミスマッチが生じないのです。
  また、会員が考案した「こだわりのツアー」も実施しています。この種のツアーは、ある特定の人にしか興味のないものを見たり、体験したりといった内容がメインですので、大量販売には不向きです。しかし催行率100%という武器があれば、機関庫の奥で眠っていた機関車を動かしたり、通常では見られないものを特にお願いして見学することが出来るのです。このようなツアーが成功すると、徐々に相手の方が味を占め、ついには定期的に販売できる大量販売向け商品となることがあります。つまり新たな旅行素材の発掘という効果も見過ごせないのです。
 あわせて、こだわりの強いお客様の願望が実現されることにより、お客様が感じるロイヤリティーがアップします。旅行商品の幅が広がると同時に、お客様の満足度も向上するのです。まさに一石二鳥の効果と言えます。
  また、「顧客参画」は思わぬメリットももたらします。当初は運営側のFSも専門知識が豊富でなければならないと思い、知識不足のFSに運営を任せることに不安を感じました。しかし、いざ蓋を開けてみるとその不安は杞憂に終わりました。なぜなら、FSにお客様に近づこうという強い熱意さえあれば、一緒に運営しているお客様が何でも教えてくれるのです。これが分かって以降、FSには専門性よりもホスピタリティを求めるようになりました。
  また、その他の面でもお客様との接点を持つ機会を増やすことで関係の強化を実践しています。
  具体的には「旅の友」の各世帯への配送は、お客様の中から募集した「エコースタッフ」とういう方にお願いしています。これにより、まず配送関係での連絡という接点が生まれます。
  さらに、そうした緊密な関係づくりから、時にはFS採用面接(オーディション)の審査員をお願いすることさえあるのです。このように色々な機会を作りだし、それを通じてお客様との接点をより多くもつことで、ロイヤリティーをさらに高めるようにしています。これも一種の顧客参画と言えます。
挿入イラスト
■ホスピタリティは自分たちで考え学び取るもの

  最後にFSの教育についてです。
  
私たちはクラブツーリズム・アカデミーという機関を作りましたが、これは「研修」を目的としているのではなく、お客様に近づくための方法を「研究」する場所です。確かに講座形式の研修も行いますが、専門的な知識を教えるのではなく、FSが一緒になってディスカッションしながら学んでいこうというものです。結果的には、顧客との関係を強化するうえで必要なコミュニケーション力やホスピタリティ力をもFS相互の間で培っていけることも大きな利点になっています。
  
例えば「接客マナーの基本」がテーマの時には、いきなりテキストから入るのではなく、小グループでディスカッションし、第一印象が重要であること、そのためには服装、表情、動作に気をつけなければならないという答えを、参加者自身が発見し、理解するようにしています。
  
また、異業種のサービスからも積極的に学び取るようにしています。例えば銀行、ファーストフード、デパートなどに実際に足を運び、そこの社員の接客マナーを観察したり、旅館の女将さんや、バスガイドの方々と交流し、接客サービスのヒントを得たりしています。
 
 このようにマニュアルに頼らないユニークな研修を通じて、いかにしてお客様とより多くの接点を持ち、お客様に近づくことが出来るかを研究しているのです。

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