レジャー研1998<東京会場>:講 演
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望月氏

講師: 望月 友彦 氏

旅館『貞千代』館主
http://www.Sadachiyo.co.jp


本内容は、日経BPベンチャー・ワールド
のコラム『久米信行・経営よもやま話』
取り上げられました。(99.6.10)


都市観光旅館の生き残り作戦  ……Page:1>>>

■はじめに

  
私が現在館主をしております浅草・助六の宿「貞千代」は、20部屋ぐらいの旅館です。このくらいの規模ですと、東京ではビジネスホテルに変えて商売をやったほうが効率もいいし、利益も出てくるのではないかとも思ったこともあります。しかし場所が、地下鉄銀座線の田原町駅・浅草駅、地下鉄日比谷線の入谷駅、これらどこの駅からも歩いて10分ぐらいかかるという立地条件を考えると、ビジネスホテルでは駅から徒歩5分ぐらいの範囲でないと経営的に難しいのではないかということ、観光のお客様であれば、内容で喜んで頂ければ、東京駅からタクシーに乗ってきていただけますので、交通の不便さを感じないのではないか等を勘案しまして、半分ほど鉄筋で建て直しをしたこともありますが、現在でも和風旅館を続けています。いつまでもつのだろうか等不安な点もございますが、いままでやってきたことなどお話をしながら、観光旅館がどうすれば生き残っていけるのかを探るとともに、皆様の商売に利用できるアイデアを汲んでいただけたらと思っております。



■都市の和風観光旅館の苦悩

  さてここ数年、なぜ東京をはじめ都市の和風観光旅館の経営が困難な状態になってきたのでしょうか。第一に都市の土地、固定資産税が高いということです。次に、ビジネスホテルに比べて、和室のほうが床の間や押入が必要な分だけ、見た目はそれほど広くなくても実際に使用する面積が多くなっているということがあげられます。
  さらに、例えば客室などの設備を考えたとき、洋室であれば、壁紙を貼るくらいで内装にそれほどお金をかけなくても大丈夫ですが、和室の場合は、部屋の中にもう一つの家を造るといったイメージになりますので、建築コストが洋室の場合よりも高くつくということがございます。また維持・管理ということを考えても、和室は畳、襖、障子などを最低でも年に1回は取り替えていかないと、お客様から苦情が来てしまいますので、保守・管理費もかかります。そして、洋室よりも和室のほうが従業員が多く必要になりますので、人件費がかかります。
  また、東京から地方の旅館へ宿泊する場合は、「温泉旅館でゆっくりしてくつろいで」と考えている方が多くいらっしゃいますので、ある程度の旅館へ泊まれば、このくらいの金額は払っても当然だと思われることが多いのですが、逆に地方から東京へ来ますと、東京の和風旅館は「狭くて薄暗くて古い」といったイメージがまだまだ残っているようで、それにお金をかけるのはちょっと…と思われているのではないでしょうか。
  さらにシティーホテルやビジネスホテルは、プライベートスペースが殆どで、他の方との接触が少なく、煩わしさがない、それがいいというお客様が増えてきたことや、日常生活でも洋室で過ごすことが多くなり、蒲団ではなくベッドで睡眠されている方も多くなってきている、というライフスタイルの変化によって、和室が好まれなくなってきたということもあるでしょう。さらには高齢者等で足腰の弱っている方にとっては、座って食事をするのは大変だ、足が下ろせないと疲れるので和室が嫌われているという状況もあります。
  こうして都市旅館の経営は悪化の一途をたどり、数も年々減っています。昨年も都内で、農協さんや修学旅行を対象とした旅館が3、4軒は廃業していると聞いています。その一方で、ビジネスホテルやシティーホテルはあちこちにできていますが、和室の旅館が新しく建築されて営業を始めたという話は、ここ20年ぐらい聞いていません。本当に厳しい状況です。
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