箱根観光フォーラム'97:パネルディスカッション 
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箱根から、国内観光の活性化を考える ……Page:>>>>>>>>>10>11>12>13>14

溝 尾  さて、ここまでは旅館業全体の現状や全国的な地域振興に触れながら、様々な課題なり考え方をご提起いただいたわけですが、ここで議論の焦点を箱根に移していきたいと思います。まず、植原さんから箱根における現状の課題なり、取り組み状況についてお話しください。
■箱根の交通問題を、「国際化」の観点から捉え直す

植原氏

講師:植原 隆生 氏

箱根温泉旅館協同組合理事長
植 原  これまで皆様が指摘されてきたこと全てが、箱根のなかの課題であろうと感じております。例えば、柳川さんがご指摘された<旅館の軒数は減少したが、客室数は増えている>という状況は箱根も同様でありますし、最近新たにできている旅館については、施設のホテル化が進んでいるという現状もあるわけです。ですから、日本の観光業の現状の縮図が、まさにこの箱根にあるのだなという気持ちでお話をうかがっておりました。
  一方、今後の箱根の方向性を考えたとき、「国際化」の波も避けては通れないだろうと考えています。昔、私がこの業界に入る前、日本には大きな国際的なイベントが三つありました。東京オリンピック、ライオンズクラブの世界大会、そして大阪の万国博覧会。これらのイベントを通じて、日本には年間かなりの数の外人観光客が来たわけですが、それが終わると同時に全く外人客の姿は消えてしまい、現在では300万人台と言われる数となってしまった。少なくとも、その倍の外人観光客が日本を訪れてくれれば、箱根も東京近辺だけに顔を向けずに、もう少し世界に目を向けた観光業に取り組めるのではないかと考えております。
  しかし、そのときに課題として何が残るのか。まず、公共交通機関の不便さがあります。日本人の場合は、特に最近ではアウトドア志向が強くなりマイカーでの移動がかなり増えていますが、国際化、つまり外人観光客にとっての利便性という点では何ら変化はありません。例えば、小田原ないし箱根湯本に降りたときのことを思い浮かべてみて下さい。国際的な観光地と呼べる案内なり交通アクセスは整っているかといえば、ちょっと心許ない気がいたします。また、日本の観光地全体に言えることですが、日本列島は細長いものですから細長い交通動態は非常に発達しているのですが、それを南北、或いは東西に結ぶ縦割りの交通手段は非常に不足している。例えば、箱根から富士山にマイカー以外で行こうとしても、それは至難の技ではないでしょうか。或いは箱根から伊豆半島の下田へ公共交通機関を利用して行こうと思うと、富士山ほどではないですが、これもまたかなり厳しい。そうした交通問題を国際的な観光地という見地から捉え直せば、東京近辺だけでなく地方からいらっしゃるお客様にも、より訪れやすい観光地になるのではないかと考えております。

溝 尾  箱根の交通問題については、国道1号線が中央を横切っていることが問題だ。つまり、箱根新道を無料化して通過客の車による渋滞をもっと整理すべきだという指摘が以前からあったと思うのですが。

植 原  様々な問題はあると思いますが、私は箱根新道の無料化は促進すべきと考えています。箱根の観光を考えた場合、この交通状態では、通過してしまうお客様はそのまま通過させてしまった方がいいという状況に来ているのかもしれません。私も以前は、通過観光客をいかに取り込むかという課題にも取り組むべきだと考えておりました。もちろん箱根の魅力づくりが何よりも重要なわけですが、しかし、現状の道路行政や交通渋滞の問題を考えたとき、本当に箱根を訪れたいお客様にとっての利便性を優先する、そういった考えにたって、用のない車は通過させてしまう方が将来的にも良いのではないかという気がしております。

溝 尾  もう一つお聞きしたいことがあります。いま私が指導している大学院の学生が「健康」をテーマにリゾートの調査をしているのですが、箱根には「箱根町を歩く会」という組織があるのだそうですね。しかも、『山を歩いて森林浴、歩くことは健康の基本』とのキャッチフレーズで2−300人規模で活発に活動していらしゃるとのこと。そのような動きはかなり増えているのですか。

■需要の増す「自然」「健康」志向にどう応えるか

植 原  今まさにそういう時代になっています。ただ、旅館業者はそのような自然・健康志向の旅行者は商売の対象にならないと、大上段にまず斬ってしまっていた。確かに、その多くの方々は低廉な宿泊施設を利用されています。しかし、自然や健康を志向されるお客様全てを収容しきれるわけでもありませんし、私ども既存の旅館も、これまで以上に「健康志向」という捉え方を取り入れて共存していくべき時代が来ていると思います。
  そして、そのようなお客様を大切にするためにも、重ねて申しあげますが、公共交通を充実させていかなくてはなりません。具体的にどのような機関が良いかは難しいところですが、例えば湯本から箱根全山を巡回するシャトルバスを設置する。私は、そのような交通機関を設置することが、箱根を「自然」「健康」という方向に繋げる一つの重要な鍵ではないかと考えております。

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