箱根観光フォーラム'97:パネルディスカッション 
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箱根から、国内観光の活性化を考える ……Page:>>>>>>>>>10>11>12>13>14

溝 尾  今のお話の関連では、第一部の木原さんの講演の中にも「儲からないお客を斬るのは簡単だが、求められていることがある以上、それにどう対応していくかを考える。そこに新しい視点が生まれる」というご指摘がありました。また、植原さんからのご提案では、もう少しグローバル化の視点から交通機関を整備し、外国人を迎える。ひいては地方、特に東京の方も箱根を訪れやすくなるのではないか。あまりにもマイカー優先の観光地になっているために、非常に不便をかけている旅行者が多いのではないかとのご指摘がありました。これらの課題提起をお聞きになって、パネリストの皆様にさらにご提案があればおうかがいしたいと思います。
■「地域の魅力」「旅館の魅力」を個々に訴える工夫を

柳 川  先ほど、瀬田さんから阿寒での早朝のお話がありましたが、箱根、或いは芦ノ湖の湖岸や森林地帯にも24時間の中で時間帯ごとの様々な「風景」があります。地元の方、特に旅館の従業員の方は慣れてしまっているかもしれませんが、春夏秋冬の季節感だけでなく、一日の中の様々な魅力を旅行者に具体的に訴えていくような工夫を、是非していただきたいという気がいたしました。このことは、公共交通機関の整備にも関連します。つまり、車で来た人にも車から降りてもらい、今までとは違うかたちで、歩いて箱根の魅力を感じてもらう。そんな機会を作り出す引き金にもなるではないでしょうか。
  一方、そうした公共交通機関の整備が進めば、当然宿泊客の客層は広がっていきます。しかし、現状でどれだけの選択肢があるのでしょうか。サービスの内容によって旅館のコンセプトや宿泊料金に明確な差を打ち出しいくような業態の変革も必要ではないでしょうか。そうした差を受け入れる旅行者が各層にもきっと出てくるでしょうし、全て横並びではなく、自らの旅館のコンセプトを打ち出すことが個々の経営、そして箱根全体の安定にも繋がるのではないかと思います。
■細かなセンスと大胆な発想で、地域を活かす

溝 尾  箱根の魅力の活かし方という点では、瀬田さん、いかがでしょうか。

瀬 田  先ほどは申しあげませんでしたが、実は昨年(1996年)4月に、日本の自然公園のサイン(標識)をどのように改善していくかという目的で、国立公園箱根をケーススタディとして、公共の案内板や地図などの実態を調査いたしました。3班に分かれて、車を乗り継ぎながら、もちろんその都度歩いて回ったのです。私は、箱根湯本から大平台、宮城野にかけてをずっと歩き169のサインの写真撮影や大きさの測定にあたったのですが、3班合計で約300のサンプルを集めました。
  すると、フランスやイギリスに比べると、あまりにもサインが乱立していてわかりにくい、或いは手入れが行き届かないから汚くなっているということがよくわかります。しかし、汚くなっても取り払わずに、時にはその横にまた新しいサインを立てている。つまり一つひとつのものをきちんと管理できていないのです。このことは日本の自然公園を歩くといつも感じることですが、新しいものに替えるのなら、何故古いサインを撤去しないのか。古いものは取り払い、もっとセンスのあるサインに変えなければいけないと思います。これは公共のサインだけでなく、様々な看板についても言えることですが。
  それから、植原さんが指摘されたように、箱根のように東京からは小田急線ロマンスカーなどを利用すれば気軽に訪れることのできる場所が、一つ軸足を替えてみると突然不便になってしまうというのは仰るとおりだと思います。ただ、まだ箱根はいい方で、日本の中には朝の通学バスぐらいしかアクセスの手段がないという所もあります。交通の問題は、交通機関とそれを運行する労働力をどう確保するかという点もあり、非常に難しい問題です。皆さんも徹底した議論をされたらいかがでしょう。例えば屋久島では、島に入るのに入島税、或いは環境税といったものを2000円徴収したらという案もあります。その代わりに、島一周のシャトルバスを定期運行させて自由に乗り降りできるようにする。もちろん島民も無料で利用できる。道路を二車線に改良して貸し切りバスが周遊するより、30分おきに必ずシャトルバスに乗れるといった思い切ったシステムを作ろうという話をしたことがあります。そのまま箱根に当てはめることができるかどうかはわかりませんが、そのような大胆な発想から新たなアイデアが出てくるかなと思います。
■「国際化への対応」にはターゲットの絞り込みが重要

溝 尾  高橋さんは、いかがですか。

高 橋  植原さんの問題意識にもあるように、「国際化」というテーマは実は今日本全国の主要都市、特に政令指定都市が一斉に掲げているスローガンです。しかし実態は、コンベンションの取り合いです。ですから、「国際化への対応」という言葉は一般的なスローガンにはなっても、ビジネスプランとしての具体性という点では未成熟だと思います。
  私の知る限り、現在宿泊施設として最もアジア人を受け入れている別府『杉の井ホテル』を例にとりますと、ここでは韓国からのお客さんを増やすために10年以上も努力を続けており、直接韓国にも営業マンを置いています。或いはホテルの中のサインやポスター等も全てハングル語で書かれたものを併設している。では何故杉の井ホテルなのかと、訪れる韓国の方々に訊ねますと、韓国には温泉がないからという答えが返ってきます。韓国人も温泉が非常に好きで、別府に対する親近感を持っているのです。さらに、九州全体がアジアをターゲットとした積極的な誘致策をとっているため、非常に安いツアーが多く設定されているということも大きな要因だと思われます。
  一方、東京や札幌の雪祭りとなりますと、韓国よりも経済的に豊かな台湾観光客が増えています。実際、韓国の人が東京ディズニーランドを訪れようとしたとき、かなりの経済格差がありますから、日本人にしてみれば4−5万のツアーも彼らにしてみれば15万円相当と、旅行をするにも一大決心となってしまいます。さらには、国際化の潮流の中でアジアの注目度は高まるばかりですので、他の国々も様々な誘致戦略を図っており、事実、韓国の方はグアム、サイパンに出掛けることが非常に多くなっています。つまり「国際化への対応」を単に言葉の問題として捉えていては、この国際的な競合環境のなかではビジネスが発生してこない。むしろ、国際化一般ではなく、国或いは目的からターゲットを絞り込み、それに合うサービスやインフラの整備をしていかねばならないということです。
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