箱根観光フォーラム'97:パネルディスカッション 
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箱根から、国内観光の活性化を考える ……Page:>>>>>>>>>10>11>12>13>14

溝 尾  これまでの議論をお聞きになられて、木原さんはどうお感じになられたのか、率直なご感想をお聞かせ下さい。
■お客の苦情の何か一つにでも真面目に応じてみることから始めよう

木 原  私は講演活動等で、年間に全国各地の旅館やホテルに泊まる機会があるのですが、その際いつも感じることを素人なりに率直に申しあげれば、私たちのニーズにあまりに鈍感だということです。こうして欲しいとお願いしても、どこでも何十年経過しても応じていただけない。この場でも、このようなサービスや対応が必要だという議論が様々な観点から指摘されていましたが、私自身も以前から感じていたことです。何も箱根に限ったことではありません。そのようなニーズが全国どこへ行っても全く受け止められないという状況は一体何なのだろうか、そこに私の一番の問題意識があります。
  例えば、私は旅館で用意されている厚い布団では寝られないので、「薄い布団はありませんか」とお願いするのですが、返事は「ありません」の一言。宿泊客への対応がマニュアル化されているために、それ以外の要望には全く応じられないのか、或いは従業員それぞれの役割が限定されているため余計なことに出しゃばることは許されないのか、内実は知りません。しかし、どこへ行ってもお客の苦情やニーズに何らかのかたちで応じてみようという姿勢が感じられない。また、先ほどシャトルバスの話が出ていましたが、以前から同様な議論を繰り返しながら、いつも同じところに戻ってくる。基本的なニーズが未だに議論されているということに、素人として異常な感じがしました。ということは、その次に何をしたらよいか――まず何か一つのことに真面目に応じてみる。そこから、それが見えてくるのではないかという気が非常にするのです。
■一人の「人」としてお客に接することが、サービス業の原点

  もう一つ驚いたことは、実は第一部で皆さんの反応を窺いながら自信なげに申しあげたこと、つまり具体的には「住民参加」「触れあい」「体験」といったことがらを、パネリストの皆さんも共通してテーマに掲げていたことです。地域住民を上手に資源として活用すれば、地元の人との「触れあい」やその地域ならではの「体験」をお客さんに与えることができる。手作りで、小規模なため、プロから見れば洗練されたサービスメニューではないでしょうが、逆に多少高くついてもそれを受け入れてくれるお客さんがいる。こういった事例は恐らく会場の皆さんには興味を持ちにくい話なのかもしれません。例えば、湯布院の旅館の主の「俺に会いに来るんだ」というのも、一人の「人」としてお客さんと相対しているから出てくる言葉です。私にもあの人に会いたいから泊まりに行くといった田舎の旅館があります。大規模な旅館・ホテルでは無理だと言われるかもしれませんが、お客さんの方は、もしかしたら皆さんを一人の「人」として、この一日でも付き合いたいと思っているかもしれないのです。
  そこでご提案申しあげたいのは、地域全体で考えるのは難しいとしたら、まずどなたかが、ご自身の旅館を足場に、そういう住民との触れあいや顧客参加の実験をできないだろうかということです。従業員の方にも、そういうサービスへのセンスをお持ちの方が必ずいると思います。「儲からない」「商売とは関係ない」と言わずに、お客さんが求めていることの一部でもいいから応じてみるのです。
  一つ事例をご紹介しましょう。池袋の百貨店で実際にあったことです。婦人服売場に杖をついたおばあさんが来たのですが、希望に合う服がなかった。相手をした店員さんは、他で探して欲しいと言おうと思ったらしいのですが、このおばあさんでは無理だと思い、他の複数の百貨店に電話で問い合わせをして、希望の服を見つけてあげた。しかし、そこへ行って下さいというのも無理そうなので、代わりに買ってきてあげちゃった(笑)。そうしたら、そのおばあさんは喜んで、あなたの百貨店で同窓会を開きたいと、後日たくさんの同窓生を連れてきたというのです。そのことは社長の目にも留まり、また私が新聞で紹介したということも手伝ってかなりの評判になりました。さらに、その社長は理解のある方で、その店員さんからの「困っているお客さんへのサービスを点数化して表彰しては」という発案を受け入れ、制度化までしてしまったということです。馬鹿らしいと思われるかもしれませんが、「人」が「人」を呼ぶということを考える際の一つのヒントになるのではないでしょうか。

溝 尾  パネリストの皆様、ありがとうございました。「グローバル化」の話で思い出したのですが、かつて台湾の知本(チモト)温泉を訪れた際、驚いたことがあります。その温泉がPRに使っている謳い文句が『台湾の箱根』なんです。日本でも『日本のラスベガス』などといった言い回しがありますが、それと同様です。どういう意味かと訊ねると、箱根は台湾でも大変な人気で、日本を訪れるのなら、東京からディズニーランドへ行き、箱根の温泉に入って帰るというのがベストだという。そのくらい「箱根」という名は売れているのです。ですから、高橋さんからターゲットを絞った国際戦略というお話がありましたが、実際そのような調査をしてみるといいのではないかと思いました。
  また、車について植原さんが提起された問題を考えたとき、一番の解決法はパーク・アンド・ライドなのだと思います。車で来るお客さんのために特定の駐車場を設置して、箱根の中はシャトルバスや定期観光バスを運行させる。そしてそれを登山鉄道やロープウェイと結んでいけば、非常に理想的な状況ができあがるわけです。
  実は、私は埼玉県川越市に住んでいます。この町は旧城下町なので歩くにはさして不便は無いのですが、観光的には不便な場所が2,3カ所ある。ご存じのように、都市の中でも鉄道の駅を結んで放射状にバス路線がひかれていきますので、それを横切って回遊するようなバスはありません。これは地域住民はもとより、観光客にとっても不便だということで、地元のバス会社が10時から16時の間に定期的にバスを出してくれています。そのバスはどこででも降りられるようになっているのですが、赤字覚悟で観光促進のために運行させている。それでも住民にとって不便な場所はやはり残ってしまう。そこで、最近都市部でも増えていますが、市役所が高齢者に優しい低床バス――『福祉バス』を新設したのです。今ではそのバスの経路やダイヤが市民に浸透してきまして、利用客もかなり増えてきました。また、川越でもパーク・アンド・ライド方式を取り入れようという声がJCなどを中心にようやく上がってきています。箱根でも、そのようなことができれば面白いなと思います。
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