箱根観光フォーラム'97:パネルディスカッション 
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箱根から、国内観光の活性化を考える ……Page:>2>>>>>>>>10>11>12>13>14
■成熟期にある国内旅行

溝 尾  国内観光地の空洞化がなぜ叫ばれるようになったのか――まず、海外旅行の伸びが著しいのに比べて、国内旅行は停滞しているのではないだろうかということが第一の背景にあったわけです。皆さんの立場からすれば、海外旅行は安い感じがする、実際にかかる総費用は決して少額ではないのですが、1泊当たりに換算すると国内旅行よりも安いというイメージを受けます。だから、海外旅行が著しく伸びている。しかしよく見てみますと、その停滞している、あるいは低迷していると言われる国内宿泊旅行であっても、まだ海外旅行の10倍ほどの規模があるのです。
  実は、私は昭和50年代の後半に、国内旅行は成熟期を迎えていると申しあげたことがあります。商品には、開発期から市場での成長期、成熟期、そして衰退、あるいは次の革新を遂げて新たな成長期に入っていくというようなライフサイクルがあります。観光地も全く同様で、全体として国内旅行の伸びが停滞・低迷しているということは、実は成熟期にあるのではないだろうか、つまり規模は大きいけれども、伸びは少ないという状況になっているのではないかということです。
■競争環境の厳しさが加速する国内観光

  次に、観光地の数が増え、競争が激しくなっている実態があります。例えば、「遊園地」というものは以前からあったわけですが、少し質的に規模的に変化を遂げた「テーマパーク」というものが新たに出現してきました。東京ディズニーランドは、現在、日帰り客や周辺地域の泊まり客を含め、海外旅行と同程度の年間集客力を持っており、その所在地である舞浜の宿泊客数は、JTBの送客ではなんと全国第4位です。東京ディズニーランドも、また舞浜という宿泊地も昔は存在しなかったわけですが、そのような新しいものが生まれてきています。また、以前は都市に住む人々が地方の観光地を訪れるというケースが多かったのですが、今は東京、大阪、福岡といった都市観光に出掛ける人が増えている。これも既存の観光地には大変な脅威となるわけです。皆さんの身近な地域である横浜を例にとれば、昭和40年代半ばまでは満足するホテルは少なく、船で入港する人を除けば、泊まりに来る人はほとんどいませんでした。しかし、その横浜も現在では箱根にとって大変な競争相手となっています。スキー場も同様で、昭和30年代半ばから急速に数が増えている。
  そのように国内全体を見てまいりますと、国内観光全体の規模は大きいけれども、その競争環境の厳しさが加速していることがよくわかります。その中において、特に箱根や伊豆半島のような老舗の観光地は追われる立場で、箱根や、熱海、伊東温泉などは、とうの昔に成熟期を迎えていた。逆に東京ディズニーランドは今成長期を迎えているわけです。そういう成熟期において、さらに競合相手に打ち勝っていくということは非常に大変なことだということです。
  明日、北陸新幹線が長野まで開業しますが、さらに近いうちには磐越高速道、つまりいわきから郡山を通って磐梯高原、新潟までの横断道が開通します。そのように、かつての「縦貫道の時代」から「横断道」の時代に入ってきています。箱根や熱海は、東京圏という大市場に位置する好立地にありました。しかし、飛行機や新幹線を利用したり、高速道が張り巡らされる時代になってきますと、立地条件の良さというものがさほど目立たなくなってくる。すると、観光資源はあってもこれまでは交通条件が悪かったという地域が浮上してきます。高速交通時代というのは、このように全国一円の競争をもたらすわけですから、老舗の観光地が非常に厳しい状況を迎えるのは当然であろうと思っています。
■大きな変革を求められている観光地と旅館業

  一方、昨年(1996年)、運輸省がまとめた『ウェルカムプラン21』(訪日観光交流倍増計画)にも謳われているように、日本人がたくさん海外へ出掛けていくのなら、日本にも外国人をたくさん呼びいれるといった努力も今後は必要です。九州では現在かなりの数のアジア人を受け入れています。日本全体で年間海外渡航者1,750万人に対して海外からの渡航者が350万人という非常に少ない数字を、もっと増やそうという動きが出ています。日本の物価高を理由に外国人は来ないと逃げている面がある。確かに、それも一つの要因ではありましょう。しかし、日本の観光地が美しくなくて楽しくないから来ないのではないか、多少物価が高くても美しくて魅力的であれば来るのではないか、私はそう思います。ましてや箱根や日光という観光地は、元来日本で一級の観光資源を有している地域であり、歴史的そして人文的にも、これほど変化のある自然景観を持っている地域は他にないと私は認識しています。
  先ほど触れた大市場への隣接ということで申しあげれば、今は逆に近すぎて日帰り旅行が増えて困っている、あるいは車が多すぎて困っているという問題はあるでしょう。さらに厳しいことを指摘させていただければ、温泉入浴者はいるが旅館には泊まらないという状況もあるなど、旅館業自体がいま大きな変革を求められているのです。そのことについても、本日の議論に取り上げていきたいと考えています。
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