箱根観光フォーラム'97:パネルディスカッション 
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箱根から、国内観光の活性化を考える ……Page:>>>>>>7>>>10>11>12>13>14
■体験型観光をテーマに観光産業の再建を図る高知県東部地域

  さて、私は昨年から高知県東部地域の観光政策に携わっているのですが、この地域は、かつては室戸岬を中心にした一大観光名所でした。しかし四国の人気観光地が道後温泉と四万十川になるにつれ、足摺岬との差が拡大し、今では激しく地盤沈下が起きています。特に旅行代理店が四国の主要宿泊観光ルートから室戸岬をはずした結果、四国巡礼の人たち以外の観光宿泊客は明らかに減少しています。宿泊施設の新規集積は一向に進まないし、このままではますます西部地域との差が拡大してしまう。そこで考え出されたのが、地域の文化・歴史・自然などの観光資源や人を活用した体験型の観光です。実際、高知県下の主要観光地や観光施設の入り込み客数は、例外なく減少してきていますが、逆に「四万十川カヌー」「西土佐カヌー」「鯨遊漁船」などの体験型観光は伸びているのです。まだその人数は多くないとはいえ、観光のスタイルが明らかに変化しつつある兆しが見え始めています。例えば、「国民宿舎むろと」では、板前さんは出すのを嫌がっているらしいですが、普通なら料理に使わない雑魚を入れた「漁師鍋」が大好評ですし、高級リゾートホテル「海辺の果樹園」では浜茶屋をつくり地引網の体験とバーベキューの昼食が大人気となっています。その他にも、ホエールウォッチングやマグロの解体の実演など、宿泊客の参加型の演出に人気が高まっているようです。体験型観光の良いところは、体験観光に地元の人が必ず介在しているということです。高知県東部地域は、海と山と川が近接しており、地域の人を活用した体験型の観光に注目することにより、こうした観光と地域振興を一体化させた取り組みを開始しているのです。
■人・もの・ことの地域資源を活用した観光が今後の課題

  これまで、地域振興と観光の結びつきについていくつかの事例をご紹介してまいりましたが、最後にこれらの事例を踏まえながら、今後の観光の在り方を展望する上での重要なポイントを、私なりにまとめてみたいと思います。
  まず第一に、伝統的な旅行スタイル、そして旅行に対する価値観が変化してきているということです。今後は、個人の感性に基づいた旅行や「人」との出会いや交流を含めた体験型の旅行が増え、従来型のマス的な旅行スタイルの需要は現在の中高年層に残るだけだと思います。巨大観光地や観光施設への集中は終焉にかかってきて、分散化傾向が進んでいくのではないでしょうか。
  それから、観光スタイルや宿泊居室の選択、そして料金に対する選択権というものは、もはや完全に消費者側に移行してきているということです。したがって、マーケティングの転換が必要になってきている。いわゆる生活者サイドでのマーケットへの取り組み――自分が泊まりたいような宿泊施設をつくる、或いは自分が受けたいようなサービスを提供していくというように、利用者側からのマーケティングへの転換が必要になってきているのだと思います。先ほど柳川さんが指摘されていた「夏のピークはずし」の例も、まさに生活者のイニシアチブではないでしょうか。
  或いは、冒頭に「ガタリンピック」をご紹介しましたが、これは地域の手作りイベントです。イベント・プロモーターが介在した大規模イベントではなく、こうした手作りイベントが非常に注目されてきており、ファン作りの面では専門家集団による大規模イベントより効果も出ています。湯布院の映画祭・音楽祭の例のように、一歩進んで県外からもボランティア・スタッフが参加できるような工夫が必要だと思います。
  最後に、これから地域にとって一番必要なのは、起業家精神を持ち続けることだと思います。例えば、リゾート施設が誘致され開業するということで終わってしまっては、地域の活性化は望めません。絶えず事業を興していくことに結びつけるという精神と実践がないと、地域の活性化というのは起きてこないではないでしょうか。新たに企業が起きることによって、Iターンも行われる。それが地域の活性化の今後の鍵のような気がいたします。
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