箱根観光フォーラム’97:基調講演 
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■サービスの提供者自身が「豊か」でなくてはならない理由

  ただし、お客と応対するときにこの「六角形」を描くということは、皆さんにもある要件が備わっていないと難しいことかもしれません。
  例えば、こんな例が新聞に掲載されていました。ある美容師が老人ホームに行って、ボランティアでカットやパーマなどをしてあげたいと申し出たそうです。その美容師は喜ばれると思って来たのでしょう。ところが寮母さんが、刈り上げで十分だから結構ですと断ったというのです。こうした例は実は結構多くあります。私は寮母セミナーで、寝たきりのご老人を海外旅行に連れ出したいと思ったことはありますか、とよく聞いてみます。すると、そのようなことを考える人は一人もいない、どうしてでしょう。話を単純化して申し上げれば、「私だってしたことがないのに、なぜ寝たきりの老人を」ということです。美容師のボランティアを断った寮母さんも、最近忙しくて髪をカットしたことがなかったのかもしれません。つまり、何を申し上げたいかというと、皆さんが豊かにならないと、お客の豊かになりたいという気持ちがわからないということなのです。
  私自身も、大学を卒業して福祉施設に勤務し始めたときは、一年中ボロボロになって働き、そういう自分を格好いいと思っていました。しかし、そんな私だから、入所者をたまにはコンサートに連れていってあげようなどとは思いも及ばない。私自身、行ったことがないからです。失礼ながら、敢えて申し上げさせていただければ、お客は皆さんが想像している以上に、もっと豊かな旅を求めているのかもしれません。そのときに、これからはお客も参加させる時代だということで、料理をつくってもらったり、芸能に参加してもらうといったことは思いつかないかもしれない。つまり、皆さんの豊かさ次第で、お客の豊かさ志向の程度がわかるということなのです。皆さんがボロボロになって働いてはダメだという、何とも妙な具合になってきました。
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