箱根観光フォーラム’97:基調講演 
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本業をひらく……Page:>>>>>>
■企業と顧客が「統合する」時代

  では、どのようにお客に関わっていけばよいのでしょうか。最近、こういう新しい仕事が生まれてきました。例えば、公民館にはインストラクターが生まれています。今までは何か特定の学習サークルであっても、訪れる人々に任せっきりの運営でした。しかし最近では、その人の人生設計の相談に乗りながら、段階毎にどういう勉強をしたらいいかをアドバイスしてあげる、いわばラーニング・アドバイザーが介在するようになってきています。皆さんも、お客が旅で何を求めているのかを一緒に考えてみる。つまり、総合的にその人の豊かな人生を考えてあげながら、ご自身の業界ニーズに対応する方策を考える。そういう視点で情報収集をしてみるのです。
  先ほど、嫌な客だと言っても、皆さんの仕事の周辺にはそういった嫌な客との接点が出来上がってしまっていると申し上げました。皆さんが、サービスの在り方や新たな商品を開発しようと考えていらっしゃるとき、実は、既に皆さんのもとを訪れている顧客が、そのヒントを持ってきてくれているのではありませんか? しかし、皆さんは大抵の場合、そのようなものを蹴飛ばしている。何故ならば、いつもの筋通りのニーズではないからです。資生堂の活動事例のように、普通なら蹴飛ばしてしまうようなお客の要求を全部受けてまじめに対応してみるのです。すると皆さんの周りにいるお客や地域が何を望んでいるのかが見えてくるのではないでしょうか。はやりの「顧客優先」も、そこまでやってみると面白いのではないかという気がするのです。
  しかし、そのようなことをしていたら、ますます経営が厳しくなってくるとおっしゃるでしょう。他の産業でも同じなのですが、ここで「お客にやってもらう」という発想に立ってみるのです。地域の住民やお客にも参加させる。つまり、お客にサービスをするということと、お客から何かをいただくということをフィフティ・フィフティに考える。例えば、海外のカントリーホテルなどでは、お客を湖に招待して魚釣りで楽しませる。帰ってきたら、魚拓を趣味にしている住民に頼んで釣ってきた魚で魚拓を作ってあげる。その上で、その魚を釣った人の食卓に出してあげる。といったことを実際にやっている例があります。いわば住民とお客とホテルが三位一体となって一つのイベントを作り上げているのです。田舎らしい営みだとはいえ、これからの時代を考えていくとき、私はそこに一つ示唆されているものがあるのではないかと思います。つまり、企業というのはサービスを提供して相手からお金をいただくということだけではなく、顧客にサービスすることと顧客に何等かのサービスをしてもらうことを統合的に考えてもいいのではないか。地域住民や顧客とが同じ考えにたってもいいのではないか。私は『統合の時代』と呼んでいるのですが、そういった時代になってきていると感じています。
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