沖縄観光フォーラム'95:パネルディスカッション 
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観光客は何を望んでいるのか……Page:>2>>>>>

司 会  小濱さんは、これまで沖縄観光に対するアンケート調査を何度か実施されていらっしゃいますが、それらの調査結果なども踏まえ、沖縄観光の今後の方向性を考える上でどのような課題があるとお考えですか。

■今後の沖縄観光を考える4つの視点

小濱氏

講師:小濱 哲 氏

名桜大学国際学部観光産業学科長
小 濱  様々な視点が考えられますが、この場では4つの観点を中心に考えてみたいと思います。
  まず、沖縄を訪れる人々が何を求めているのかという点ですが、「青い海・白い砂浜」「固有の伝統文化」「特異な歴史性」という話はもう議論し尽くされているような気がします。ここで気をつけなくてはならないのは、私たちが「沖縄らしい」と思って主張していることに、受け入れる側も同じ価値観を持ってくれているかという点です。つまり、固有性の客観的価値というものと、私たちが持っている自意識というものが乖離する場合があるのではないかということです。例えば首里城に対するイメージも、本土の人にとっては「城」から連想する姿と実際の首里城から受ける印象との乖離から、オープン当初は「面白くない、期待はずれ」との反応が非常に多く見受けられました。最近のアンケート調査結果によれば、ある程度のイメージのすりあわせもできつつあるようですが、旅行会社を中心に、首里城を商品化したとき、首里城というイメージを知らない人にどう与えたかが問題だと思います。こうした例に代表されるように、沖縄らしさ、或いは沖縄に対するこだわりが、そのまま商品化されるとは限らないというところを、もう少しクールに考える必要があるのではないかと思います。
  次に、「観光立県」「観光産業は基幹産業」といわれる割には、宿泊業や観光関連産業における人材育成と労働条件の改善があまり図られていないのではないか、という点があります。特に賃金と勤務体系については、原因は大きく分けて二つあると考えています。一つは経営の問題で、海洋博以降沖縄観光が急成長を果たすなかで、どれだけ先を読みながらグローバルな視点にたった経営が行われてきたかという点です。二つ目には、観光産業は沖縄の基幹産業だという割には制度資金が使いにくい、或いはないと言っても過言ではありませんが、そうした支援策が施されてこなかったというのも問題です。もちろん、経営側が明確なビジョンを示すことが前提ですが、中小企業振興の中核に観光関連産業を位置づけるなど、行政からの支援がより積極的に展開されるべきではないかと考えています。
  3点目に県内外資本の有効活用という点にも触れておきたいと思います。今や資本が県の内か外かといった二律背反の議論の時代は過ぎさったのではないでしょうか。人材育成のノウハウの面においても、本土系の資本の会社には学ぶべき所も多くあります。彼らの持っているノウハウをもっと吸収して沖縄ライクにアレンジしていく、そんな積極的な交流があってこそ沖縄観光にも強さが出てくるのではないかと思っています。
  最後に、「環境」についてです。観光開発を進めていく上で常に考えねばならないのは「誰のための開発か」という原点を見失わないことだと思います。自然環境の破壊に対する議論についても、一体誰のために自然環境を守るのか――決して観光客のためではないですよね。私たち自身の問題なのです。ここの議論をはき違えてはいけません。そういう意味では、自然だけでなく、都市化の進む社会環境についても同様です。祭り一つ捉えても、今どれだけの人が自然なかたちで祭りに参加しているのでしょうか。これまで沖縄に根付いてきた「人と人との繋がり」の破壊をどうくい止めるのか。沖縄らしさを残していくためには、自然環境も大切ですが、むしろこうした社会環境の維持に関する議論がもっとあってしかるべきだと思っています。

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