沖縄観光フォーラム’95:基調講演 
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観光産業と環境保全
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加藤氏


講師: 加藤 秀樹 氏

大蔵省金融財政研究所研究部長

※現在、政策立案シンクタンク
構想日本』の代表をされています。

 私も旅行愛好者の一人ですが、「観光」と「環境」はなかなか難しい関係にあると思います。観光資源には自然や文化・歴史などがありますが、今やそれだけでは不十分で、ホテルがあり、道路があり、或いはもっと人を呼ぶためにはプールやゴルフ場などの施設も必要になってくる。その結果、次第に元の自然や歴史的な町並み、景観というものが変わっていく。あまり変わり過ぎたのでは元も子もなくなる。そのような事態にならぬよう適当なバランスをとるということは大変難しいことですが、今後の「観光」のあり方を考えていく上では、非常に重要な課題であると考えています。
  本日は、こうした課題を考えていく上で、そもそも環境問題とはいったい何なのか、どういうことを本質的な問題として捉えておけばよいのかということを中心に、「観光と環境」について、お話ししてみたいと思います。


■環境問題の背景、特徴、本質とは

 環境には大きく分けて四つほどの主要な役割があります。一つは、空気があり水がありということで、まさに私たちの生命を維持するという役割。2番目に資源の供給。観光産業の場合も同じだと思います。3番目に私たちがつくった廃棄物の吸収や処理。そして4番目にアメニティの供給。観光もそれを求めての行為だと言えます。環境問題とは、こうした環境が本来持っている機能が弱くなったり、或いは無くなってしまったりすることである。当たり前のことですが、専門家はそのように定義づけています。
  では、なぜ環境の機能が弱くなったり、無くなったりするのか。一言でいうと『環境というものを使い過ぎているからである』ということになると思います。問題は、なぜ私たちは周りの自然環境というものを使い過ぎることになるのか。ここが一番重要ななところです。
 ここにコップがありますが、コップを大量につくるには、ガラスの原料も大量に必要です。ガラスの原料をたくさん使えば、その材料の値段が上がってくるわけです。ものの需要と供給で、需要がどんどん増えれば、ものの値段は上がってくる。上がってくれば、コストを抑えるために、使うのをなるべく減らそうとする。そうすると使う量が減ってきて、ものの値段が元に戻る。だいたいものの値段というのは、そのように動いているわけです。一方、環境には値段がついていません。例えば海を汚す。汚すというのは、そこに廃棄物を出すという意味ですが、廃棄物の処理費用というものは誰も海に払わない。つまり、いくらそれを使い過ぎようが、それに対して値段を払わなくて済むことから、つい使い過ぎてしまう。そこに環境問題の根本的な問題点があるということだと思います。
  例えて言えば、環境というのは、猛烈社員が自分の睡眠時間を減らして、給料を増やそうとしている。ところが、給料が増えるのはいいけれども、睡眠時間や食事の時間も減らしているうちに体を壊してしまい、元も子もなくなる。ある意味では、そういうことと似た現象ではないか。もともと環境というものがあって、その中で私たちは生活をしている。特に観光の場合はそうだと思います。きれいな空気、水というものが売り物で、それをネタに仕事をしている。ところが、それをやり過ぎると、肝心の商売のネタであったものをダメにしてしまうということです。

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