沖縄観光フォーラム’95:基調講演 
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観光産業と環境保全  ……Page:>>>>>>
■「環境」がもつ本来の価値とは

  冒頭、環境問題の本質的な問題点は使いすぎるということで、なぜ使いすぎるのかといえば、私たちが環境に値段を払う仕組みになっていないからだということをお話ししました。環境がもつ「価値」という点で、一つ例を挙げますと、よく熱帯雨林がかなりの勢いで減少しているという話を耳にします。仮にある熱帯雨林に木が1万本生えているとして、それを1本切って日本に持ってくれば1000円で売れるとします。その1000円とは、切る労賃、日本に運んでくる運賃などです。私たちが知っている経済的な価値、市場で決まる価値で計るとすれば、その熱帯雨林の価値は1000円掛ける1万本で1000万円ということになります。しかし、それが本当に1000万円の値打ちかどうか、私たちの経済活動の中で決めたお金というもので推し量ることのできるものなのかという問題があります。
  熱帯雨林は炭酸ガスを吸うという自然のバランス維持にとって大変重要な役割を果たしていますが、そのような価値は1000万円の価格の中には含まれていないのです。また1万本の木があれば、そこには多くの動・植物、さらに土中にも多くの微生物が棲息しており、1万本の木を全部切り尽くしてしまえば、それら全部が生存不可能になってしまう。他の地域にはない種が絶滅してしまう可能性も高い。こうした生物の多様性を維持するという役割をも1万本の森林が持っているのですが、そのような価値は1本1000円という値段の中には全然含まれてきません。つまり、私たちが値段で計っている価値と本当の価値というものは、全く一致していないということになります。もちろん、本当の価値をどのように計るかということは極めて困難なことです。しかし、少しでも本来の価値に値段を近づけて、なるべく環境の持っている価値というものを私たちの生活に反映させ、それが使われ過ぎないようにするにはどうしたらいいのかということで、現在様々な場所から様々な知恵が出されてきています。
  その一つの有力な手段として、「環境税」の導入ということが考えられています。環境税というのは、例えば1本1000円というのは木の本当の値打ちを表していない。では2000円がいいのか、3000円がいいのか、5000円がいいのかといっても、よくわからない。しかし、よくわからないけれども、2000円にすれば、木を使う人たちはおそらく消費量を減らそうとするわけです。そこで、木1本あたり1000円の税金をかけて、少しでも木の消費量を減らそうというのが環境税の考え方です。先程、環境に値段がついていないことが問題の本質だと言いました。環境税とは、環境に何がしかの値段をつけようというものだと言えます。
  税金をかけることには、大きく分けて二つの目的があります。一つは税収・歳入の確保で、国の予算を調達する手段として税金がある。もう一つは、いまの環境税のような話で、税収の調達ではなく、個人或いは企業が何かをしやすくしたり、しにくくする。つまり、個人や企業の行動を政策で決めた方向に誘導するための手段として税金をかけるということです。環境税とは、本来、税収の確保が目的ではなく、なるべく木を使わないようにしようと皆が合意するのであれば、少ししか使われないように木に税金をかけるというものです。こうした環境税を巡る議論は、ヨーロッパではかなり進んでいます。日本においても、今後、否応なしに盛んになってくると思います。私は、個人的には早急に具体的な議論を進めていくべきだと考えています。
  そのときに、一つだけ念頭に置いて頂きたいことがあります。税金というと何がなんでも反対で、また金を取られるという発想ではなく、本来私たちが環境に対して払わなければいけないコストを、私たち全員がいまはタダで使っている。そのタダの分をみんなで少しずつ払おうではないか。或いは、木や海や空気というものを使い過ぎないように、また汚染されないように、少し値段を高くして環境を守っていこう。環境税とは、本来そういう考え方に基づく、逆説的な言い方ですが、いわば税収がゼロになることを究極の目標とした税金であるということを、頭の片隅に入れておいていただければと思います。みんながそれは嫌だと言えば、環境汚染はどんどん進んでいく。そしてどこかで私たちにそのツケが回ってくる。ですから、必ずやいつかは考えなくてはならない状況になると思っています。
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