沖縄観光フォーラム’95:基調講演 
TOP >> SEMINAR >> 観光フォーラム >> 沖縄観光フォーラム(基調講演) 

観光産業と環境保全  ……Page:>>>>>>
■モノが売れない時代と新たなニーズの出現

  さて、いま全国的に景気が悪いということがしきりに言われています。消費がいくら減ったとか、景気対策を行ってもなかなか消費が伸びないと言われていますが、よくよく考えると、なぜ無理してそんなに消費を増やさなければいけないのでしょうか。私たちはGNPとか成長率という数字に囚われがちですが、なぜ成長率が5%なら非常によくて、1%なら困ったものだということになるのでしょう。ましてや消費という行動は、消費者の立場から考えると、何かが欲しいとか、どうしても必要だといった状況から生まれてくるものであるはずです。もともと、なぜ消費が減ってはいけないのか、なぜ消費量が増えないといけないのか。これはあまりにも売るほうの論理でばかり考えているのではないかという気がします。今年の夏に発表された総理府の「国民生活に関する世論調査」の結果をみても、国民の満足度はかつてない高い数値に達しています。経済成長率の高かったバブル期にはむしろ低く、現在の方が高いということは、先程も申し上げたように、私たちの豊かさや生活に対する満足度と経済の成長率とは必ずしも結びつくものではないということを端的に表す事例ではないでしょうか。
  バブルの時期に、立派なホテルができ、立派なレストランができ、立派なリゾート地ができ、着る物も外国の有名ブランドが大量に入ってきた。日本人はかなりの程度、衣食住のいろいろな局面で、最高級のものを全部は手に入れなくても、どこかでチラッと見てしまったようなところがあるのではないかと思います。極端なことをいえば、例えば着る物でも、一生買わなくても生活していけるぐらいのものが、夏服だって冬服だってあるわけです。流行モノを別にすれば、かなりの人は少なくともモノに不足しているということはない。したがって、ある意味では、今モノがそう売れないということはそんなに不思議な話ではなく、無理やり景気対策で消費を増やさないといけないということを言う必要が本当にあるのかなという気がしてなりません。
  一方、こうした中、最近「3K」ということが言われています。「3K」というのは頻繁に使われる言葉で、使われるたびに中身は変わっているようです。最近の「3K」というのは「健康・教育・観光」を指し、これからの産業はこの「3K」だと言われています。たしかに、健康産業に例をとれば、高齢社会に向けて若い人もアスレチッククラブとか、女性であればエステとか、体に気を使うようになってきている。これは衣食住のほかの面がかなり充足された結果、やはり体が重要だということになってきている証拠だと思います。教育についても、日本人は基本的な教育はだいたい受けていますから、それ以上に高度な教育を子供に受けさせたいというニーズが非常に強くなってきている。これもモノの面で豊かになったことの一つの表れではないかと思います。また、観光ついても、"食えるか食えないか"などと言っているときには観光どころではないのですから、モノの面ではかなり豊かになって、次に何をするかというところで、珍しいものを見に行きたいとか、変わったものをどこかへ行って食べたいとか、どこかへ行ってのんびりしたいというようなことが出てきているのだと思います。
  この「3K」に象徴されるように、消費が伸びない、或いはモノが売れなくなったという背景には明快な理由が存在しているのです。先程の繰り返しになりますが、着るものだって食べるものだって、そこそこのところまでくれば、そう増えるものではありません。いくらファッションだといっても、毎年背広やセーターを買う気にはなりません。ですから、そういうレベルのニーズが減ってくるのは当然であって、それを無理やり増やそうとしても増えない。逆に「3K」という言葉で表されるような新しいニーズが出てきている。そういう意味で、勢いのある産業というのはどんどん変わるのだと思います。消費全体のレベルがどうであるか、成長率全体がどうであるかということではなく、かなり豊かになった時点で、次に何が出てくるかということにもっと着目していく必要があるのではないでしょうか。
NEXT >>