沖縄観光フォーラム’95:基調講演 
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■観光客のニーズにどう応えるか―――「本物」と便利さの制限

  さて、今後成長が見込まれる「3K」の一つは観光だということを申し上げましたが、残念なことに、この場合の観光とは、円高を背景に急増している海外旅行を指すことが非常に多いわけです。しかし、日本も捨てたものではありません。自然もたくさん残っていますし、田舎に行けばいいところもあります。しかし、費用が安くなっていることもあり、海外の人気が高い。それはリゾート地であれ、ヨーロッパであれ、先ほどのイタリアの例のように、それだけ各地固有の魅力があるからだと思います。日本では「○○村」などというかたちで欧州各都市の復元やイミテーションがたくさんありますが、やはり沖縄には沖縄のものがないといけないし、長崎だって出島を復元するならともかく、なぜオランダのものを持ってこなければならないのでしょうか。例えばイタリアで日本の武家屋敷をつくろうと考えるイタリア人は、一人としていないと思います。いくら立派なものを持ってきても、偽物であることには変わりがありません。そんなものをつくるのであれば、何分の一かのお金でもっと地元の町並みをきれいにして、本物を残すべきだと私は思っています。
  さらに観光客のニーズと満足度を考える上で、もう一つ「利便性」という問題があります。先程申し上げた「効率性」と同様、私たちはどうも便利さということにあまりにも慣れ過ぎてしまって、どこへでも行けることが当たり前の状況となっています。ヨーロッパは大いに開かれた場所ですが、それでも先に例にあげたイタリアの小さい町や村に行こうとするとかなり不便で、一日に1本しか汽車が通っていないというようなことが多く見受けられます。山へ行こうと思ったら高速道路もない。そういう意味では、おそらく日本の方がよほど便利になっているのだと思います。便利であるということはもちろんいいことですが、ただ、便利さばかり追いかけていっていいのかなという感じもします。有名な例が日光の尾瀬ですが、ここも非常に便利になって、高速道路ですぐ行ける。その結果、観光客がどんどん増えて、尾瀬の植物が枯れたりするということになっているわけです。
  それと、あまりにも便利すぎると、感激度が減るということもあります。そのために不便にするという必要はないにしても、苦労して来たということで感激度も増すわけですから、そういうことも少しは考える必要もあるのかなと思います。例えばヨーロッパの町というのは、オールドタウンの中では車は一切禁止というところが多くあります。便利さを考えれば車を走らせた方がいいわけですが、そこは便利さを取るか、安全とか落ち着きとか静かさということを取るかという哲学の違いなのだと思います。ですから、効率と同様に便利さというものも、どこまで追求すればいいのか。これも観光にとっては非常に難しい問題だと思います。あまり不便だと誰も来ないし、便利さを追求しすぎると、いいものがなくなっていく。極めて微妙な問題ではありますが、「利便性」と観光客の感動とのバランスということは、観光における適正な収容力を管理するという面でもよく考える必要があると思います。
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