沖縄観光フォーラム’95:基調講演 
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観光産業と環境保全  ……Page:>>>>>>
■観光産業の新たな可能性

  これまでお話しをしてきましたように、モノを大量に生産して消費し、そして棄てるということをいつまで続けるのか。もう地球がもたないというところまできていますし、そもそも量を増やす、経済成長をするということと豊かに感じるということは、必ずしも一致していない。その様な状況を考えると、これは一種の文明論になると思いますが、大量生産、大量消費、大量廃棄というのをそろそろ見直す時期にきているのではないかと思うわけです。先進国であったはずのヨーロッパ、先程のイタリアの例でもそうですし、最近小説に紹介され日本の観光客が急増したといわれる南フランスのプロヴァンス地方にしても、実際に行ってみると田舎ですし、かなり不便なところです。しかし、そのような場所に本物が残って、魅力が出てきている。そこでは、成長とか、効率とか便利さ、などとはかなり違った生活が行われているわけです。多くの日本人がそのような場所に集まってきているということは、ある意味では日本よりは今や文明的には後れている地域に魅力を見出しているということにもなるのではないでしょうか。
  このことに関連することとして、やや耳慣れない言葉かとは思いますが、「ゼロ・エミッション」という言葉があります。「エミッション(Emission)」とは廃棄物のことで、現在国連大学が中心となって「廃棄物ゼロの町をつくろう」という運動を推進しています。その一つの試みとして、屋久島に「ゼロ・エミッション」のモデルになるような一画をつくろうという計画があります。そもそも「ゼロ・エミッション」の具体的活動内容とは――例えばビールをつくると麦芽のかすが出てくる。その麦芽のかすを牛に食わせて牛を飼う。牛が糞をする。その糞を肥料にして野菜をつくる。そのように、廃棄物を使って何かほかのものをつくる。それで一巡すると廃棄物が出てこないという連続性、一つのサイクルをつくって、それを一つの町なり村で完結するようにしてしまおう。それで、全体として廃棄物がゼロとはいかないにしても、廃棄物が極力減るような町をつくろう。簡単にいえば、そういうことのようです。これは沖縄でもほかの場所でもできることです。ここにはオリオンという有名なビールがありますが、ビールでいえば全国的に「地ビール」が注目を集めていることもあるわけですし、工夫すれば、小規模だがそれで一巡すると非常にクリーンな一つのサイクルができる。そういうものを観光の一つの目玉にしていくということも、今後の観光開発に向けた一つのアイデアではないかと感じています。
  金太郎アメ式のワンパターン観光開発ではなく、その土地の風土や伝統など個性を生かした観光産業を考える。その際、成長、効率、便利さ、新しさなどばかりではなく、ゆとりとか、変わらないこと、などを重視する。そこに本物の持続可能な観光産業の可能性があるのではないでしょうか。